君のいる世界廻る星
□プロローグ
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悲しみと暗闇の淵から、呼ぶ声がする。
光の中からのばされた手に、
自分の、血で汚れた手を伸ばす。
あと、少し、もう少しなのに
「許さない。」
振り向くとそこにはもう一人の自分。
「逃げたって、追い掛けるから、何処までも」
◆
「カンナ・・・!!!!」
思い切り体を揺すられた衝撃で目を覚ます。
目の前には鮮やかな緑色の髪。
それを見ただけで安心する。
またあの夢か。
「坊っちゃん大丈夫ですよ、ちょっとうとうとしてただけです。」
まだ少し心臓が揺れているが、悟れぬよう笑顔をつくる。
坊っちゃんはバーカ、と小さく呟いてカンナの頭を軽く叩く。
「何がうとうとだよ。完全熟睡でうなされてたっつの。」
少々心配そうな顔だが、ケロッとしているカンナに安心したようだった。
「お前さ、2人だけの時は名前で呼べっつったじゃん。」
坊っちゃんはねーよ坊っちゃんは。
「ぁあそうでした。どうも坊っちゃんが型についてしまっているようです。」
実際の所、カンナは坊っちゃんと呼ぶと嫌がるのを見るのが好きだったりする。
そうそう、正に今の顔。
「なーに、ニヤニヤしてんだよ。ウゼェな」
カンナは笑った。
きっと今自分は幸せなんだろう。
こんなにも平和な日常が一番大切。
彼と一緒にいるだけでいい、一緒にいれるだけで。
記憶の奥で小さく揺れる言葉に無理やり蓋をした。
「許さない」
彼女の鋭い眼光。
「逃げたって、追い掛けるから、何処までも」
大丈夫、大丈夫、
自分が生きているのは今だ。
過去じゃない。
カンナは無理やり振り払う。
だから大丈夫。
思いとは裏腹に、心はざわめいていた。
彼女が近づいて来る。