君のいる世界廻る星

□No.3
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4人は明日に備え休むよう部屋に戻され、出された質素な食事を食べながら、自己紹介をすることにした。

まず初めに真紅の髪の少女が言った。

「あたしはイリア・アニーミよ。色々あってアルカに追われてる途中に、捕まっちゃったの。前世はイナンナよ。」

「あなたがイナンナでしたか・・・。成る程、全く似てないので気付きませんでした・・・。」

カンナがまじまじとイリアを見ながら言った。

「何よ、悪かったわね。どーせおしとやかさの欠片もないわよ」

イリアが不貞腐れるのを見てスパーダは笑った。

「お前さっきオレが言った事気にしてたのか」

うるさいわね!!!とイリアが食い付くのを気の弱そうな少年がなだめた。

「イリア、落ち着いて・・・。
あの僕はルカ・ミルダです。レグヌムでイリアと会って、その後異能者捕縛適応法で捕まってしまって。前世は一応アスラです。」

カンナはこの少年に見覚えがあった。
あの時感じたアスラの気は気のせいでは無かったと確認した。

「今日の昼にレグヌムの大通りで会いましたよね。ほら、正面衝突した・・・」

ルカはハッとした。

「す、すいません・・・うっかり忘れてて大丈夫でしたか・・・瓶が割れちゃってたみたいでしたけど」

「気にすんな気にすんな!どうせカンナが突進して来たんだろ。コイツは足はやいけどイノシンみてーだからな!!」

スパーダはルカの背中をバシバシ叩いた。

「スパーダは黙ってて下さい。それとルカ、自分に敬語は不要です」

カンナが優しく笑いかけるとルカはホッとしたようで、表情を和らげて頷いた。

そこへいきなり、緑の毛の奇妙な生き物が現れる。

「コーダはコーダだぞ。しかし」

カンナは突如現れた生き物を凝視した。
猿・・・?いやネズミの一種・・・?

「あの、か、この方は・・・。」

「あぁそいつねー、あたしの故郷の謎の生き物なんだけど。ほっといて良いわよ食い意地張ってるだけの生き物だから」

イリアの雑な説明のせいで、ますます気になってしまった。

「まぁ、よろしくね、コーダ」

お近づきの印にポケットから簡易食のチョコレートを出す。
一かけらをあげようとするとコーダは一瞬でそれをカンナの手から奪い取る。

「おぉ!チョコだなしかし!コーダはチョコ大好きなんだな!しかし!」

「・・・・あ、あのそれあげます。」

本当はひとかけらのつもりだったが、全部とられて大事そうに抱えられてしまったら仕方ない。

「本当かしかし!お前良い奴だな!コーダは美味いものくれる奴好きだぞ!」

「それはどうもありがとうございます。」

カンナは丁寧にお辞儀をすると隣から野次が入る。

「何コイツ・・・喋り方がクソウゼェ。踏み潰していいか?」

スパーダだ。

「ダメですよ。そんな事したら動物愛護団体が黙ってませんよ」

スパーダはカンナの影に隠れたコーダを横目に見て舌打ちした。


「話し戻すぞ。オレはスパーダ・ベルフォルマだ。前世はさっき言った通りデュランダル。よろしくな・・・で」

スパーダがカンナを親指で指す。

「コイツはオレの“パシリ”のカンナだ。アホで口悪いけど良い奴だからな、仲良くしてやってくれ」

「ちょっと何を自己紹介位自分でできますって。しかもなんですパシリって失礼極まりないですけど、謝ってください。でないと坊っ」
スパーダは慌ててカンナの口を塞ぐ。


「あーあー!すまねぇ言い過ぎた!友人!友人だよなぁ!」

目で訴えてくる。
・・・これは良い弱みを握ってしまった。

「あの、カンナ・・・。君の前世ってもしかして“シオ”じゃない?」

ルカが期待の眼差しで見つめてくる。

「今日町で会ったとき、君の姿にシオが重なったんだ。だからもしかしたらって・・・」





雲ひとつ無い空に浮かぶ太陽の光に包まれながら、
シオは噴水に腰かけていた。
膝の上には美しい刀身を持つ立派な剣を乗せそれを丁寧に磨きながら。

ここはセンサスの王アスラの住居、天空城。

空に浮かぶこの城は、その美しさと雄大さから、そう呼ばれていた。

「デュランダル、わたし聞きましたよ!この前の戦また大活躍だったようですね」

シオは柔らかな声で膝の上の剣、デュランダルへ話掛けた。

「無論、我とアスラが揃えば敵など無し。しかし最近は増して切れが良い。お前が丁寧に手入れをしてくれるおかげだろう。感謝している」

機械的な声でデュランダルは応える。

「いいえ、わたしの好きでしているのです。あなたとこうしている時間はわたしの大切な安らぎの時なのですよ。」

シオは微笑んだ。

「最近切れが良いのは手入れのお陰だけでは無いようだが。
だろうデュランダル、シオの愛を存分に感じていれば俄然やる気も湧いて来ると言うもの。」

「兄様っ!!」

声の方へと振り向くとにんまりと二人を見下ろすアスラ。
シオは目が合ったとたん、燃えるように赤面した。





スパーダは満面の笑み。よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに。

「そうだ!その通りだルカ君!!
カンナの前世は正しくシオ!心優しく、可憐で、なんたってシオはデュランダル大好きだったからなぁ!!!!」


オマケになんか良い匂いがした!

カンナは思わず隣の大声に方耳を塞ぐ。

「叫ばなくたって良いじゃないですか・・・前世の話しですよ前世の」

イリアとルカも笑って頷く。

「そうそう、シオはアスラの可愛い妹だったよね。純粋で摺れてなくて・・・デュランダルに取られてちょっと寂しかったもの」

「そーそー、あたしなんて良く恋愛相談受けたわね。それがもう初々しいの何のって・・・。ま、剣に恋なんてしちゃうちょっとぶっ飛んだ娘だった!!!」

カンナは前世の事といえど赤面した。みんなからはこんなに温かく見守られていたとは・・・。

「んだよ!剣に恋して何が悪いんだよ、デュランダルはカッケェんだから仕方ねーだろ!!」

スパーダは思わず席を立ち上がる。膝が机に当たってスープやパンが揺れた。

「ちょ、ちょっと興奮しないでくださいって!前世の話しですから!!!あくまでも前世のっ!!」

カンナがスパーダのシャツの裾を引っ張って座らせる。


そんなカンナの脳裏にはある光景が過っていた。




死体の転がる戦場にポツンと立ち尽くすシオ・・・。
手には自分の体よりも大きな、まがまがしい槍を持って。

転がる亡骸をみながら罪悪感に苛まれながらも、その心は何とも言えぬ快楽に満たされている。

もっと、もっと沢山殺したい。



カンナの最近見る夢は、シオが快楽的殺人に身を委ねている場面ばかり。

あまりに急激な二面性を持った自分の前世にカンナは混乱していた。


「あの・・・自分まだ前世の事良く思い出せてなくて・・・シオってアスラ達と一緒に戦ってましたっけ?」


カンナの質問に一同はポカンと口を開けた。

「何言ってるのよ、あんたはイナンナと同じ非戦闘員だったでしょ」

「・・・ですよね。じゃあ、シオが快楽的殺人に走ってたりした事は・・・」

「んな事あるわけねーだろが!シオは可愛くて優しくてデュランダル大好きだったんだからよ!殺人するわけねーだろ」

スパーダはデュランダル大好きの所に力を込める。

なら、あの光景はなんなんだろう・・・。
・・・。ま、いつかわかるでしょう。
「あの・・・デュランダル大好きって所強調しないで下さい。なんかイラっとするんで」

カンナは迷惑そうな顔でスパーダを見る。

「おぃ、お前自分の主人にそれはあんまりじゃねぇの???」

スパーダの言葉にルカとイリアは声を同時に上げた。

「主人???」

「あっいやっその、アレだアレ!ホラ、コイツオレのペットだからなホラ、わんって言え!!!」

「はぁぁ!???」

カンナは思わず声上げた。
咄嗟に寄りによって最低な嘘をついてしまったスパーダに、2人はどことなく距離を取る。

「す、スパーダ・・・ペットって・・・・一体何を・・・」

ルカは顔が赤を赤くして驚愕の眼差しをスパーダとカンナに向ける。

「あ、あんた達けっこうハードな趣味をお持ちだったのね・・・」

イリアに関してはどん引き状態。
「オイ!!!てめーら!何を想像してやがんだよコラ!!!!」

スパーダは思わず勢い良く立ち上がったが、そういう自分も顔が赤かった。

「ちょっと自分巻き込むのは止してください!イリア!!自分は潔白です信じて!」

カンナは必死に身の潔白を主張。そこへコーダ。

「しかし、確かにカンナは犬っぽいな。猫ではないなしかし。コーダは猫嫌いだぞ」
追いかけられるからな。

「テメェは黙ってろクソネズミ!!!」

スパーダの八つ当たりは見事にコーダに向かった。


一息ついてイリアが口をあける。

「取り敢えずはあたし達明日からは背中を任せて戦う仲なのよ。仲良くしましょ」

イリアの一言に、一同の気はズシリと重くなった。
明日からは西の戦場でガラムとの闘い。

「・・・僕達本当に戦場へ送られちゃうんだ・・・。」

「な、泣きべそかかないでよ!なんとかなるわよ何とか・・・」

イリアはバツが悪そうにルカを慰めるが、そういう自分も泣きそうだった。

「チッいつまでこんなんが続くんだよ・・・」

スパーダも心なしにカリカリしている。右手にコーダを握りつぶしながら。

カンナはこの暗い状況を打開すべく考えた。
何か皆さんを勇気づける言葉を考えねば・・・。あ、
精一杯明るくしながら言う。

「だ、大丈夫ですよ。自分、昔ガラムで傭兵してた事あるんで、あちらの作戦は大体わかりますから!」

カンナの突然の告白に、一同は唖然とした。

「お、お前、傭兵って・・・」

「皆さんの命は必ず自分が守ります!」

カンナは自分の胸を思い切りグーで叩いた。
あまり強く叩き過ぎたのでむせそうになったのを涙目で堪える。

その様子をみてイリアが小さく笑った。


「なーにが護身術の類いよ!実際に戦場で戦ってたんじゃないの」

「うん、通りで強いわけだよね」

ルカもそれを聞いて少し楽になったようだった。

スパーダは3人が戯れる様子を見ながら、ぼそっと呟いた。

「オイ、カンナ。お前ちょっと顔貸せよ。」

・・・・まずい。スパーダが怒ってる。

2人は部屋の隅に移動して声のトーンを下げる。

「傭兵って何だよ聞いてねぇんだけど。」

「・・・黙ってた事、怒ってますか?」

カンナはわざと目線を反らせながら、つぶやく。

「怒ってねぇよ、でもウゼェ」

・・・それを怒ってるって言うんですよ。心の中で言った。

「カンナ、オレ達は今や運命共同体って奴だ。」

「・・・・・・はい。」

「だからな、お前が秘密主義なのはわかるけどよ、オレたちの間で秘密は無しだ。」

「・・・・・・・いや別に秘密主義じゃないですけど。」

「だからなカンナ、コレは主人の命令だ。何でもオレに言え。」

バカな事を言い出したとスパーダの顔をみるとその顔は真剣そのもの。

「何でもって・・・何ですか。」

スパーダはカンナの質問に少し戸惑った。

「だから、な、何でもだよ!!!!」

カンナはいまいち良くわからなかったがスパーダの命令に了解した。

「・・・じゃああの、秘密にしてた訳じゃないんですけど、自分が此処に送られてきたとき・・・その・・・」
カンナは少しモジモジした。

「な、何だよ・・・。」

スパーダはなぜかその反応に期待した。

「ご当主の書斎をぶっ飛ばして来ちゃったんです。すいませんちょっと力入っちゃって。・・・あー言えた言えた何かすっきり!」

カンナは言えたスッキリさから何か晴れやかなオーラを発した。だがうってかわってスパーダがっかりする。

「そんなんどうでもいいわ・・・オレが言いたいのはもっとこう・・・」

きょとんとするカンナに、スパーダは一瞬固まって、そのあとため息ついた。

「だよな・・・お前はそーゆう奴だ」
まぁそこがいいんだけどさ。
自分の小さな独占欲に、スパーダは少し笑った。

「もういいわ。明日早いからもう寝ようぜ。」

スパーダはカンナの頭を撫でる。カンナ笑った。

「はい!」

人の気も知ねーで。
2人はルカ達の所へ戻った。


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