君のいる世界廻る星

□No.5
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基地へと戻るとそこは酷いありさまだった。

数ヵ所に爆破された後があり、それにより火事がおきている。
レグヌム兵達は突撃の襲撃に押されるがまま。


戻る途中で基地から火の手があがっているのを発見した一行とチトセは急いで戻った結果がこの惨劇。

「奇襲ですね、ガラムの十八番です」

カンナはそう言いながらも武器を構える。

「のんきに言ってる場合じゃないっての!」

隣にいたイリアが呆れ顔で言った。
そんな一行の目の前にレグヌム指揮官が姿を現した。

「ガラムの奇襲だー!!!!総員警戒せよー!!!」

突然の襲撃に相当動揺しているようだ。

そこへ発砲音が響く。

そのとたん目の前のレグヌム兵が、バタリと倒れた。

「あわわわっ」

ルカが焦って後退るが、スパーダは剣を抜くとある方向を凝視した。

「伏せろ!!!」

スパーダの声に一同が地に伏せた瞬間。また発砲音とその直ぐ後に金属のぶつかり合う音。
スパーダが敵の弾を剣で弾いたのだ。

「!!!素晴らしいです!流石スパーダ!稽古の成果とゆうものですねっ」

そう叫んだカンナの隣に、指揮官が地面をはって来た。

「全くだ!!その技量、褒めてつかわす!!!」

こんな時も偉そうだ。
ルカがカンナを挟んで指揮官に訪ねる。

「今一体どうなってるんですか?」
「見ての通りだ。撤退に見せかけて、伏兵を置いたらしい。まんまと本陣への奇襲を許してしまった!まったく、見張りは何をしとるか!重営倉入りさせてくれる・・・」

悔しそうに唇を噛む指揮官をカンナは横目に見る。

「じゃあ自分は見張りの方を慰めます。責めるべきは自分ではなく浅はかな指揮官ですよって・・・」

「何ッ!!!」

カンナは別に指揮官に嫌味を言ったつもりではなく、単純に見張り役を気の毒に思い言ったのだが、もちろん指揮官にはただの嫌味にしか聞こえなかった。

「消火活動概ね終了しました!」

そこへレグヌム兵がかけてきた。
「バカ者!!伏せろ!!!」

指揮官の叫びも虚しく、彼は一瞬でどこからか撃ち抜かれ倒れた。

「見えた!そこだな!!」

兵が倒れた直後、スパーダはそう叫ぶと10メートル程離れた茂みに向かって斬り込んだ。
それとほぼ同時に黒いコートに身を包んだ長身の男が現れる。

「・・・・・!」

カンナはその男に見覚えがあった。

男は素早く体制を持ちなおし、無言でスパーダに狙いを定める。

「へっ良い度胸じゃねーか!」

そこへイリア。
イリアは男に銃を向けた。


「待って下さい!!!」

「!!?ちょっとな、何よアンタ!!!」

引き金を引こうとするイリアの銃口を手でふさぎカンナが止めた。

男がカンナに目線をずらすと一瞬目を見開く。

「お前は・・・」

「先輩!!!やっぱり、リカルド先輩ですね!自分です、カンナです。」

カンナは飛び付きそうな勢いで背の高いリカルドに近寄るが、彼は眉間に皺を寄せため息をつく。

「・・・ここは戦場だ。馴れ合いはよせ。今は敵同士だろう」

と言いつつもリカルドは銃を下ろした。カンナは久々に見たその姿に喜びを隠せず、顔がほころぶ。

「敵なんてよして下さい、先輩を攻撃するわけないです。それに自分たちは異能者捕縛法で連れて来られただけで戦に来ている訳ではありません。」

カンナはスパーダ達を振り返りリカルドとの間柄を説明する。


「この人はリカルド先輩。自分が傭兵時代にお世話になった上司です。」

三人は怪訝そうにリカルドを見る。リカルドもまた同じ。

「どんな理由があっても、敵は敵だ。馴れ合いはせん」

無愛想な軍人口調。

「流石先輩です・・・変わりませんね。」

冷たく突き放されたのにもかかわらず、カンナはにんまり。


「あ、あの・・・あなたは・・・」

ルカが口を開く。
リカルドがルカに目線だけをずらし、目が合うと小さくびくつく。

「ヒュプノス・・・ですよね・・・?死神のヒュプノス。」

おどおどする彼に、リカルドは一息置いて答えた。

「・・・・・アスラか」

否定、ではない。
ルカはその瞳に怯えをちらつかせながら、恐る恐る言葉を紡ぐ。

「僕・・・、ここと同じような戦場であなたと戦って、あなたを倒して・・・その・・・・」

その言葉を裂くように、リカルドがルカに銃口を向ける。

それに反応してイリアとスパーダがすぐさま武器を構える。

「せ、先輩・・・!」

「勘違いするな。俺は俺の仕事をするだけだ。」

「僕らを殺すのがあなたの仕事なの・・・?」

動揺するルカを余所に、リカルドは淡々と答えた。

「野営地奇襲の目的は、糧食の焼き討ち、そして正規軍指揮官の暗殺・・・」

カンナはうんうんと感心して頷く。

「ガラムも飽きずに同じ作戦ばっかでご苦労ですね。まぁ学習しない王都も王都ですけど」

「・・・お前も相変わらずだな。」

リカルドはカンナを見てにやっとする。と思うとすぐ無愛想な無表情に戻った。

「戦場からガキや女を追い散らすのは契約に入っていない。だから邪魔立てするな。」

「・・・相変わらず、甘いですね」

「撃ち殺されたいか」

カンナは聞こえないように言ったつもりだったのだが、しっかり聞こえていたようだ。

「待って待って!!」

イリアが割り込む。

「ね、前世の恨みで銃向けてんじゃないのよね?だったらさ、話聞いてくんない?」

リカルドは即答。

「断る。
言ったはずだ、ガキとのお喋りは仕事のうちに入っていない。俺は仕事熱心な方でな」

「というか金の亡者」

「撃ち殺されたいのかと聞いている」

またもや小声で呟いたつもりだったのだが、カンナはしっかり銃口を押し付けられた。

「すいませんーすいませんってー、あれですよねぇ地獄の沙汰も金次第って事ですよねぇー」

カンナの発言にルカがすかさず指摘する。

「カンナ・・・それちょっと使い方ちがうかも・・・。」

「・・・3度目は無いぞ。」

そこへイリアが負けじと声を張り上げる。

「いーじゃん!ちょっと聞いてってば!あたしたちさ、前世の記憶を持った人に会って回ってんのよ。良かったらさぁ、一緒について来て・・・

って、全然そんな気なさそうねぇ。参ったなコリャ」

前世の記憶など無関心、むしろ迷惑そうなリカルドの顔に、流石のイリアもお手上げだった。

カンナはイリアに耳打ちする。

「イリア・・・この人はお金が大好きですからね、何か金目のものをちらつかせれば一発おっけ」

言いおわらないうちに発砲音が響き、カンナの髪を弾が掠めた。

「3度目は無いと言っただろう。」

いきなりの発砲にムっとしたカンナは武器を出す。

「ほーぉ、やりますか、やるんですね、やりましょう!!!」

飛び掛かろうとしたカンナをスパーダががっしり押さえる。

「オイ、落ち着けよ!今さっき『先輩を攻撃するわけないです』とか言ってたのはどこのどいつだよ!」

カンナはスパーダの腕の中でもがく。

「はっ離して下さいっあのスカシた顔に一発蹴でも入れないと気が済みません!!!」

「小僧、感謝する、そのままそいつをしっかり押さえておけ。」

カンナへと狙いを定めるリカルド。だがその銃の頭をスパーダが引っ掴んだ。

「オイコラ、撃たせねーよ!お前らホントに先輩後輩だったの!!?仲良くしろや仲良くよォ!!!!」





「などと、緊迫した雰囲気など気にせずに、登場するオレ」

突然響く緊張感の無い声に、一同は同時にその主を見る。
現れたのは赤とピンクと白いフリフリに赤い槍を担いだ怪しい男だった。

「やあやあ、楽しそうだねぇ
こういう楽しそうな光景に嫉妬の念を覚えちゃうオレとしては、すべてをぶち壊したくなるワケでして」

残念な事にカンナにはこの精神異常者のような男にも見覚えがあった。

・・・今日は懐かしい人によく合いますね。

「ハスタ、元気そうですね。相変わらず絡みがダルいです。しかもその格好なんです?気持ち悪い事に上乗せしてめちゃくちゃ浮いてますけど。」

ハスタはカンナを視界に捕えると嬉しそうに笑う。
本当に相変わらず気持ち悪い笑い方だと、カンナは思った。

「わーお!カンナちゃんではありませんか!カンナちゃんしばらく見ない間にイメチェンした?何そのメイド的なカッコ・・・って言ってる途中に銃向けないでくれるかなァ?おにぃさんそーゆう事されるとうっかり殺しちゃいそうになっちゃうからやめてくれる?マジで下ろさないと殺すよ。」

カンナとハスタはお互い良い笑顔で銃口と切っ先を向け合った。

「何、コイツ?カンナの知り合い??」

イリアがどん引いた顔でハスタを見る。

「この人はハスタとゆう名の元同僚です。といってもまともに仕事した事無いですけど。いつもこの通り、邪魔するんで」


「ハスタ、貴様は奇襲作戦のメンツには入ってなかったはずだが?」

リカルドはもう半分呆れながら言った。ハスタが仕事をサボるのは日常茶飯事だからだ。
ハスタは槍の切っ先をリカルドへと移す。

「おーっと、人の口上を遮る礼儀知らずのバカはっけ〜ん。罰として殺しちゃっていい?
・・・脳内裁判で問答無用の惨殺刑でいいと判決を頂きました。頂いちゃいました。緊急時なので控訴は却下だポン」

悪ふざけの過ぎるハスタを、リカルドが睨みつけた。

「・・・貴様、何が目的だ?略奪でもしに来たか」

ハスタは敬礼のように急に気をつけした。それには一同少しビビって武器を構える。

「えー、さてさて問題です。オレは何しに来たんでしょうか?
1、花を摘みに
2、夜空が綺麗なので散歩
3、奇襲部隊への伝令」


ハスタの問題を聞き付けたコーダは、イリアの影からぴよこっと顔を出す。

「いやいやしかし、3ばん!」

「ぶっぶ〜!まだ問題の途中です〜。正解は4番
手応えの無いザコ殺しに飽きてリカルド氏を相手に楽しもうかなっと刃物持参で表敬訪問、で」

発砲音が響き、ハスタの言葉を遮る。
と、次の瞬間ハスタの頭上から踵が落ちてきた。


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