君のいる世界廻る星
□No.6
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・・・・・・・・・・・・・・・。
何か、具合の悪い気がする。
いや、気がするってだけで本当に具合が悪いって訳じゃ・・・・・
な、何か体が熱くてダルい気もする・・・・・・・・・。
「オイ、カンナもうバテたのか?だらしねぇなぁ」
数メートル先からスパーダの声がかかる。
カンナは大きく息を切りながら、よたよたと歩いていた。
「ち、違いますよ・・・ちょっとお腹がすいちゃって・・・。」
「んだよ、もうすぐナーオスに着くからよ。それ迄我慢しろよ」
軽く、カンナの頭に手を乗せると何か違和感。
・・・熱い?
「カンナ、お前もしかして熱あんじゃねぇ?顔色も悪いしよ。」
「まままさか!自分が熱など出すわけないですっこの通り、ピンピンしてますからっ」
カンナはそう言って、前を歩くイリアとルカまで全速力で走っていった。
「あ、おい待てよ!」
スパーダも後を追い掛けた。
今、一行はナーオスに向かっていた。ルカとイリアの当初の目的地であり、ナーオスには聖女と呼ばれる転生者がいるというのだ。
そうこうしているうちに、ナーオスが見えてきた。美しい港町だ。
「へぇ、ここがナーオスかぁ」
ルカは街並みを見渡した。
イリアも美しく穏やかな街にうっとりする。
「キレイな所ねぇ。緑が豊かで、ノンビリしてる感じ」
「んで、どこに転生者がいんだ?」
スパーダの疑問に、イリアは首を傾げた。
「さぁ?知らないけど」
「えぇ?そうなの?」
ルカがいきなり不安そうな顔をする。
「だってぇ、噂を聞いただけなんだもん。ナーオスで奇跡を起こす聖女がいるって」
その言葉に一同は唖然とした。
「ただの噂でここまで連れてこられたのか?・・・捕まって脱走してまで?」
スパーダがイリアに食い下がると、案の定言い争いだす。
「あーもううっさいっての!」
「まぁまぁ、聖女の噂なら自分も聞いたことあります。たしかナーオスの大聖堂にいるシスターの事ですよ。」
カンナの一言に、2人の表情は明るくなった。
「早く言えよなぁ!」
「そーと決まったらレッツ大聖堂!」
「美味いもの探索なんだな!」
2人・・・と一匹は大聖堂へと向かう。
「・・・ルカ、行きましょう。」
元気なさそうにぼんやりしていたルカはカンナの声にハッとする。
「あ、うん行こうか」
「・・・・・・どうかしましたか?元気無みたいですけど、少し休みますか?」
カンナは浮かない顔をしているルカを覗き込む。
「何でもないよ、大丈夫。ありがとう・・・・ってえぇ!!?カンナ!!?君の方こそ大丈夫なの!!?顔が真っ青だよっ」
あまりに幽霊のようなカンナを見て、ルカが驚く。
だが心配をよそにカンナはへらへらと笑った。
「大丈夫、大丈夫!自分定期的に青白くなる持病もってるだけなんで!」
と言いながらガタガタと震える。
「そんな持病聞いたことないよ!?嘘つくならもっとまともなのにしよう!!?ってそんな場合じゃないよ!」
ルカはカンナのおでこに手を当てる。・・・熱い。
「発熱してる。風邪引いたんだね。少し休もう?」
「い、いえ発熱ごときで皆さんの足を引っ張る訳には・・・自分は、熱何ぞには負けませんから!!!!!」
カンナはホラ!この通り!!!と叫びながらスキップしてスパーダとイリアの後を追い掛けた。
「ちょっと!無理しちゃダメだよっ倒れちゃうって・・・・!」
ルカが急いでカンナを追った。
イリアたちはもう大聖堂の前まで来ていた。
「ここがナーオスの顔とも言うべき大聖堂ね。」
「まーたコリャ派手にぶっ壊れてんなぁ」
「ぼ・・・ボロボロ・・・ですね・・・・」
隣に息を切らして現れたカンナにイリアは小さく悲鳴を上げる。
「あっあんたのがボロボロじゃないの!一体どうしたってのよ・・・」
「なに・・・久々に・・・スキップしたら・・・疲れただけです・・・。それにしても、これはどう見ても無人ですね。」
もとは立派な大聖堂であったろう場所は、無惨に崩れた瓦礫の廃墟と化していた。
「ど・・・どうしようか・・・」
カンナの背中を擦りながらルカが言った。
「ンなの決まってんでしょ!ほら、いろんな人に話を聞いて回んのよ!」
イリアはずんずんと踵を返した。
「あっイリア待って・・・カンナの具合が良くないんだ・・・」
と、ルカがイリアの腕を取ったとき、後ろでドサッという何かの倒れる音。
「カンナ・・・・!!!!」
後ろを振り返ると、大聖堂の前に倒れるカンナの姿。
すぐ様駆け寄る一同。
「お、おい!カンナ!!!!確りしろっ一体何がどうしたってんだよ!!」
スパーダはカンナを抱き上げる。
「ま、待ってスパーダ!!!そんなに揺らさないでっ。カンナは風邪引いてたんだよ、凄い熱でしょ」
「なんでもっと早く言わねぇんだよ・・・・っ」
と言い掛けたところで、スパーダは先程の一連の出来事を思い出す。
・・・熱があったんだ、あの時から。オレがあの時気を遣ってやらなかったからこんな事には・・・。
「失礼ですが・・・、お坊ちゃまではございませんか?」
ふと懐かしい呼び方につい振り向くスパーダ。
「ハ、ハルトマン!!!?」
そこには上品な身なりの老人。嬉しそうにスパーダを見ている。
「左様でございます!ハルトマンめでございます。ご記憶に留めいただき、光栄の極みでございますなぁ」
老人と打って変わってスパーダは慌てまくっている。
「あ、あの、ハルトマン?その、ここじゃなんだから・・・その、連れの具合が悪い。宿まで案内してくれないか・・・」
「それは、一大事ですな!ならばじいの家でよろしゅうございますか?」
スパーダはがっとカンナの体を抱きながら立ち上がる。
「構わない!!案内してくれ!!!」
一行はスパーダの家の元執事、ハルトマンの家に世話になることになった。
氷水に浸したタオルを絞る。するとハルトマンが横から手を伸ばした。
「そんな事はわたくし目が致します。お坊っちゃまはあちらでゆっくり休まれていて下さい。」
ハルトマンはリビングの机へ手を指す。そこには既に、ルカとイリアが腰掛けていた。
「いい。オレがやる。」
スパーダは冷えたタオルをカンナの火照った額に乗せ、頬に手をつける。
・・・熱い。苦しそうなカンナの顔を見ると、胸が締め付けられる。
「ごめんな。」
ルカとイリアもカンナの横になるソファーの周りに集まった。
「まだ、目を覚まさない?」
「・・・ぐっすり寝てる見たいね。」
スパーダがカンナの髪を撫でる。
「きっと疲れてたんだな。ここ数日で環境が変わりすぎてる。・・・オレが無理させたんだな。」
思えば、オレを助けに来てからずっと気を使いっぱなしだったもんな。
・・・ちゃんと気を遣ってやらなかったせいか。
「お坊っちゃま、ベットの支度が整いました。その後は、じいが腕によりを掛け作りましたので夕飯になさって下さい。」
ハルトマンが2階から降りてきた。
「ご馳走なんだな!しかしっコーダは腹がへったぞ!!」
「お前ら先食べてろよ、コイツ寝かしたら戻るから」
きゃいきゃい喜ぶコーダを余所に、スパーダはカンナを抱き上げ、2階のベットへ向かった。
スパーダを見送って、ルカとイリアは席に着いた。
一瞬の沈黙の後ルカが口を開く。
「・・・何となく思ったんだけど、スパーダってカンナの事好きなのかな・・・?」
「・・・・・・・・・あんた気付かなかったの?アレは誰が見ても絶対そうでしょ。・・・でもあの二人って何なのかしら。付き合ってんの?」
「・・・・・・・・・さぁ・・・・・・・・」
◆
ふわふわの波の中にいる様な感覚だった。
体がゆらゆらと揺れて温かくて。
これは夢でしょうか?
前世の夢では、無いようだけど・・・。
「カンナ、行くところが無いんだったらオレんとこ来いよ?」
スパーダに腕を掴まれる。真剣な表情。
「だったら、働けば良い。オレの家でオレの側近になれ。」
あ、これはそうだ。スパーダと初めて会った時の、記憶だ・・・。
ひとりぼっちで不安だった自分に、居場所を与えてくれた、
・・・・・そうだ自分の仕事はスパーダの側近。
彼を守らなければ、それが、
自分の仕事・・・。
こんなところで・・・・挫けるわけには・・・。
◆