君のいる世界廻る星

□No.11
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潮風と穏やかな波の音に包まれて、気持ちが良い。

みんなは甲板に出て海を眺めている。楽しそうな声がカンナのいる2階の甲板まで聞こえた。

カンナはその光景を穏やかに見つめていたが、それは一瞬で壊される。

海を見つめるみんなの後ろに、彼女がいた。
体より大きな魔槍をもった彼女が。

「やめて!!!」


カンナは叫んだ。

「皆さんには手を出さないで!!自分は此処に、此処にいるからっ!」

彼女はこっちを見る。
目があうと体が金縛りにあったように動かない。


彼女の唇がニヤリと曲がる。

「嫌」





「やめてぇっ!!!!!!!!」




叫びと同時に目が覚める。
心臓がドクドクと音を立て、すごい冷や汗がカンナの額を伝った。

目の前に広がる光景を見て、カンナはホッとする。

・・・夢だ。

「カンナ・・・大丈夫?怖い夢を見たのね」


隣で寝ていたアンジュが心配そうに覗き込んできた。

「あ、いえ、大丈夫です・・・起こしちゃってごめんなさい。少し風に当って来ますね。」

「1人で行ける?」

カンナはアンジュの問いに笑顔で頷きベッドから抜け出すと寝巻姿のまま外へ出た。


外は夜の海。風が強く、汗をかいたカンナの体は少し冷えた。

カンナは階段を上って、甲板へと出る。


上は満点の星空、綺麗だった。

明日はとうとうアシハラに到着する。


思えばベルフォルマ家を飛び足して、1週間が立とうとしている。
色んな事があった・・・仲間が増えて、世界中を周る事になって。

ドタバタはしていたけれど楽しい旅になりそうだ。

カンナはふと下の階の甲板に目を落とす。

心臓が飛び跳ねた。
人影がいたように見えたのだ。

夢の中の残像が重なる。

シオ・・・・。


タイミングよく夢に現れたものだと、カンナは思った。

真相心理と言うものか。

カンナはまだ正直、シオ、もとい厄災が怖かったからだ。

大丈夫。気をしっかり持て、カンナ。

大丈夫。


カンナは甲板を後にした。







カンナは船から下りると、沈みゆく島アシハラの大地を踏みしめた。

「や、やっと・・・アシハラに来てしまった・・・。」

「そーいやお前なんでそんなアシハラ楽しみにしてんだよ、ガイドブックもすげぇ読み直してたし」

「・・・アシハラは島国独特の文化が栄ていますからね、様々な伝説があるのです・・・それのひとつが埋蔵金伝説・・・、昔の将軍様がこのアシハラのどこかに隠したとされている金品財宝、手に入れれば一生遊んで暮らせるという伝説が!!」

カンナはガイドブックを朗読しながら言った。

「お、なんやええ話しとんやん。何なに、その埋蔵金どこにあんの?」

エルマーナが目ざとく、話を聞きつけて来た。

「えっとですね・・・アシハラの観光資源を周りながら一緒に埋蔵金を探そう!五つの寺社をまわってスタンプを集めよう!全部集めたら記念品として金の招き猫プレゼント!・・・だそうです」

スパーダとエルマーナは固まる。

「おい・・・それなんか・・・違くね・・・?」

「何かのツアーの一環やろぉ・・・期待して損したわぁ」


「・・・それ、いつのガイドブックだ??」

エルマーナの後ろからリカルドがぬっと現れた。

「え?えーと、10年前のです・・・。」

「成る程な・・・多分この寺社の半分はもう沈んでいるぞ。」

「えぇぇぇ!!そんな!それじゃあスタンプ集まらないじゃないですかっ!!」

カンナはリカルドに掴みかかる。

「そんな事は知らん。そもそも、10年前のツアーじゃとっくに終わっているだろう・・・」

リカルドは迷惑そうにカンナを振り払い、カンナはショボくれた。


「・・・あら、ルカ君具合悪そうね、大丈夫??」

アンジュがルカの様子に気付いた。

「あぁ、何か昨日良く眠れなくて・・・実はさ、昨日見ちゃったんだ・・・」

「見ちゃった?」

一同はげっそりとしたルカに注目する。

「昨晩、2時頃かな・・・?僕船酔いしちゃって、風に当たりに外へ出たんだ・・・。そしたらさ、立ち入り禁止の2階の甲板から誰かがこっちを覗いてたんだ・・・誰だろうと思ったらね、女の人なんだ。白いワンピースみたいなのを来てて、髪が長くて・・・・。あんな時間に、立ち入り禁止の甲板に、女の人・・・僕もう怖くて怖くて、ダッシュで部屋に戻って震えてたんだ・・・」

「ななななんやねんルカ兄ちゃん、ウチもう夜中1人でトイレ行けへん!!!」

「そうよっ!!なんでそんな話すんのよ!おたんこルカ!!!!」

ルカの話に、エルマーナとイリアは盛大にビビった。

だがカンナは少しの気まずさを感じながら思った。

・・・多分、それ自分です・・・。というか、あそこ立ち入り禁止だったんだ・・・。
夜風に当たりに甲板へ出た時に見た人影はルカだったんですね・・・。

視線を感じてアンジュを見る。
アンジュもカンナだと言うことに気付いたらしい。

・・・せっかくなので黙っている事にすると、何故か女性についてのディベートが始まり、夫に浮気され、当て付けに自殺した人妻の霊と言うことで落ち着いた。


「それじゃあ本格的に聞き込みはじめましょっか!!!」

また、手分けして探す事になった。

チーム分けは以下の通り。

ルカ、イリア、コーダ
エルマーナ、スパーダ
カンナ、アンジュ、リカルド

さっそく別れて聞き込みを開始する事にした。



アンジュとリカルドと回る事になったカンナはしばらく3人で聞き込みしていた。

「・・・この国は特有の宗教があるのね、まぁそれらを祭ったお寺や建造物はほとんど沈んで残ってないようだけど・・・」

「そうだな、大きく古い寺社でまだ水没の被害を受けていない所を探すか。」

リカルドとアンジュは難しい顔でうんうんと頷いていた。


カンナは、興味無いので水没している建物を眺めていた。

まるで海の中に町があるような不思議な光景だった。

「美しい国なのに・・・各国に見られる天変地異は、やはり天上崩壊と関係あるのでしょうか・・・??」

「確かに、無恵も天上崩壊から来ているから、そういう考えも有りかもしれないわね。・・・さ、また聞き込みに行きましょう」

アンジュだ。

「えー・・・ちょっと休憩しません?」

「ダメよみんな聞き込みしてるんだから。」

「・・・リカルド氏があんみつをご馳走してくれるとおっしゃっておりました」

アンジュはぴたっと固まり、リカルドを見た。
リカルドはカンナを睨む。

「この前、言ったじゃないですかぁ・・・。嘘つきは泥棒のはじまり・・・」

「・・・仕方ない。店でも聞き込みはできるだろう、良いかセレーナ」

「そうね、そもそも聞き込みは人さえいればどこでもできるから!行きましょう!」

明らかにあんみつと言う言葉に釣られたアンジュは鼻歌混じりに甘味処へ向かった。

カンナとリカルドは顔を見合わせた。


「はい、おまちどおさま!」

アシハラ独特の衣装、キモノに身を包んだ元気の良い少女があんみつ2つとお茶を運んできた。

「わぁ・・・これがあんみつと言うのね・・・素敵」

アンジュはしばらくうっとり眺めると一口食べた。

「甘い!!!美味しい!!!!」

アンジュはあんみつを前に目をキラキラさせて食べた。


「お〜・・・アンジュをノックアウトとはやりますね、あんみつとやら・・・」

カンナも一口食べてみた。

「・・・・うまぁ!!!!何でしょうこれは!!?見た目こそ地味なのに今までのデザートの常識を凌駕する美味しさですっ!!!先輩も一口どうぞ!!」

カンナはあんみつをリカルドに押しつけた。リカルドはあんみつ自体に興味は無かったが、2人のオーバーなリアクションが気になったので一口食べて見ることにした。

アンジュとカンナはドキドキしながらリカルドを見つめる。

「・・・・・・・・・・・甘いな」

リカルドはボソッと言うと、あんみつをカンナに帰し、口直しにお茶を飲んだ。

「・・・感想、それだけですか・・・」

「・・・別に、甘いと思ったから甘いと言っただけだ。」


アンジュとカンナは顔を見合わせた。

「何かもっと、こう・・・ねぇ、思わず吹き出しちゃうような・・・」

「気の効いた一言が欲しかったですよねぇ・・・先輩はスカシ担当ですからキャラ守りたいのはわかりますけど・・・」

リカルドは何かにムカついたのか、カンナのあんみつをわしずかむと、口に全部流し込んだ。

「あぁぁっちょっ先輩っあぁあ゛ぁ全部食べたぁこのひと!!!!」

「甘いがこってりとしたクリーミーさはないな。だがこの黒い物体の強い甘さが効いていて少量でも充分に満足できる。この白い弾力のある球体と透明なブロックも食感に変化があって面白い。そこへさらに甘い黒い蜜がかかって全体の味をまとめている。大陸にはない面白いデザートだ。ターゲットはおそらく女性だな」

リカルドは一気に言い切るとドヤ顔した。

「あ、あの・・・想像を越えた的確な感想だったと思います。」

アンジュはそう言うとサッと自分のあんみつをガードした。

カンナは泣き叫ぶ。

「うわぁぁぁ鬼ぃ悪魔ぁあんみつかえせぇぇぇ!!!!」

「カンナ、覚えておく事だな。人にご馳走になるときは謙虚に感謝して食べる事だ。」


「うぅ・・・意地悪・・・ネクラ・・・人でなし・・・顔色悪男・・・スケベ・・・」

カンナは泣きながら残り蜜を舐めると、リカルドは声を上げて笑った。

「リカルドさんたら、大人気ない・・・」

「ほぅ、ではセレーナの分をカンナにやれば良いだろう。」

「あら、コレは私がご馳走になった分ですからね、私が責任を持って頂きます」

カンナはアンジュを怨めしそうに見た。


3人は店の店員から、有力情報を聞き、さっそく待ち合わせの港へ戻ったが、まだ誰も来ていなかった。


「さっきの店員の女の子、先輩の事チラッチラ見てましたね。」

「リカルドさんの事が好みだったのかしらね・・・?」

「えぇ・・・かわった趣味・・・このヒゲメンを???」

カンナはリカルドを見て、ないわ・・・と呟いた。
リカルドは無言でカンナの顔をわしずかむ。

「イタタタタ潰れる!潰れるっ!!!!すいませんすいません!ヒゲメンのイケメンですよね!!!」

リカルドはカンナを解放した。

「・・・まぁ、あと数年待てば相手してやらん事もないな。」

「うわッ!!ヒゲメンが何をいっタタタタタ!!!!すいませんすいませんすいません」


そうこうしていると、みんな揃ったようだ。







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