君のいる世界廻る星

□No.13
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「いってらっしゃい。」

ハート乱舞する一言で、門は閉じられた。
一行はスパーダの犠牲により見事ケルム火山に入る事に成功したのだった。

ルカは魂が抜けて虚ろな目でぐったりとしているスパーダを見て涙目。

「スパーダが可哀想だよ・・・うぅ」

リカルドも深く頷く。

「あぁ、奴はよくやってくれた・・・ベルフォルマの冥福を祈る・・・。」

そんな二人にエルマーナは肩をすくめた。

「なんやねん大した事じゃないやろに。門番のオカマが兄ちゃんに頬っぺチュウしただけやん」


カンナが真っ白なスパーダを揺すってみる。

「スパーダ、しっかりしてください・・・アンジュが膝枕してくれるって言ってますよ・・・」

反応はなし。

「アンジュの膝枕に反応しないなんて・・・これは重症です・・・。」

「もう、人の事餌にするのやめてくれる?どれどれ」

アンジュは腕を捲るとスパーダに手をかざす。

「天よ、スパーダ君を絶望の淵からお救いください・・・リカバー」

「はっ!!!!」

スパーダは息を吹き返した。
ぶるるっと震えて、はぁはぁと肩で息をした。

「スパーダ・・・大丈夫ですか!!?」

「あぁ・・・カンナか・・・オレは地獄を見たぜ・・・」

スパーダの瞳が恐怖を物語っていた。カンナはスパーダの背中を擦る。

「一仕事終えたら必ずお祓いしに行きましょうね。」


そこへアンジュの咳払いが響く。

「ハイハイ、収集つかなくなるからここで切るよ。まぁスパーダ君のお陰でこうして火山に入れる事になったんだけど、一つ提案があるの」

みんなはアンジュに注目した。



「殺人者ハスタの討伐を引き受けたけど、それはついで。本命は記憶の場探しにしましょ。」

「おわぁ、アンジュ姉ちゃん、結構香ばしいねんなぁ……」

ルカが不安げに挙手した。

「ハイ、ルカ君」

「でもそんな事したら、あの門番さん黙ってないんじゃない?・・・詐欺だって・・・」

「誰も勝てない相手なんでしょ?わたし達が討ちもらしても誰も責めないと思うわ」

アンジュにみんなが感心した。

「さすが俺の雇い主だな。教会関係者だけの事はある」

「ええ、正直なだけじゃ生きていけませんから。皆もそれでいい?」


全員一致の可決で一行は火山へ向かった。


「とは、い・い・つ・つ・も。前回やられた恨みがあります。今度こそあのクレイジーピンクをボッコボコにしますよ」

アンジュやイリアが先に進んだところで、カンナが小声で言った。

「お前、暴走すんなよな。・・・けどまぁ賛成。オレもハスタを倒さなきゃならねぇ・・・気がする」

「・・・どんな気ですか・・・。」


「俺も多少なりとも責任がある。
出来れば倒したい。」

リカルドが後ろから現れた。
どうやら2人の話しを聞いていたようだ。

「・・・だが、あくまで"ついで"だ。いいな?」

「了解です。」

「ああ、わかってるさ」



一行はまだしばらく坂道を上り、とうとう火山へと足を踏み入れた。



「うぁぁぁっつぅ!!!」

イリアが火山内の熱さと、硫黄臭さにむせ返した。

火山内には、恐らく山頂へと続く人口道がかけられている。その遥か足元には赤く燃ながら流れる溶岩が見えた。

「うわぁ・・・みてカンナ・・・僕溶岩なんて初めて見た・・・凄いね。」

ルカが目を輝かせながら下を覗き込む姿が、何故かカンナのイタズラ心を呼び覚ました。
見に行くふりをしてルカを驚かせてみる作戦。

「えぇーどれどれ。・・・・・っとわぁ!「フワギャアァァァァァ!!!??」

少し押しただけなのに、予想を遥かに越えたルカの声にならない叫び?声に、逆にカンナがびびってしまった。

ルカは凄い形相で掴みかかってきた。

「なななにするんだよ!!!おぢだらどうずるのさっ、うわぁぁぁぁ」

凄い形相だが涙が凄いので、逆に情けない。そしてその顔がさらにカンナの罪悪感を募らせる。

「すいません本当にすいません。もう二度としません天に誓ってしません・・・・天もうないけど」

「カンナの馬鹿・・・ひどいよぅ・・・ううっ」


うしろではその様子をイリアとスパーダがケタケタ笑いながら見ていた。

もちろんその後はアンジュのお説教。



最初はみんな熱さを我慢し、他愛ない話しをしながら登っていたが、中盤でとうとう無言になった。

すごい熱気に体力と水分だけが奪われていく。


「あっつい!もう、たまらん!ルカ!扇いでよ、ホラ!!」

イリアがとうとう癇癪をおこし喚き始め、ルカは苦笑いした。

「熱風がかき回されるだけだと思うよ?」

「いいのっこのままじゃ熱くて頭おかしくなるぅぅ!!!!」



「ふう…ふう……暑い熱いアツイあつい篤い厚いぃ〜」

アンジュはスカートをバッサバッサしながら雄叫んだ。
いつもなら、はしたないとかいって怒るくせに、どうやらアンジュもこの熱さにやられたらしい。

「アンジュ?何か変だけど大丈夫?」

ルカの心配を余所にアンジュはさらに叫ぶと、まるで子供のように体を揺らしてダダをこねた。

「リカルドさん!ちゃんと熱から守って下さい!わたしは依頼人なんですよっ」

リカルドもまさかのアンジュに少々衝撃を受けたようだった。

「ボディガードとしてちゃんと依頼人を守りたい。……そう思って努力は常々してるつもりだった。だがな、俺の力が及ばん事もある。それに体感温度の調整までは雇用要項には入っていなかった」

カンナはたじたじなリカルドを指さしてケタケタと笑っていた。

「はぁ、ダルダルやわ・・・カンナ姉ちゃんは随分と余裕やねぇ・・・尊敬するわ・・・」

カンナは得意気に自分のブラウスを指差した。

「実はこのブラウス、通気性抜群のクールビズブラウスなんです!伸縮性にも優れてるし、お気に入りなんですよっ」

「カンナずるーいっわたしなんかこのケープ重くて熱いんだよっ交換してよ交換んっ!!!」

アンジュが今度はケープをバッサバッサした。

「アンジュどうしたんですか、なんか今日愛らしいんですけど・・・。」

「アンジュ姉ちゃんはいつも愛らしいで?ぽよぽよしてて、なぁ?」

誰もが顔を真っ青にするがエルマーナは悪びれもせずニコッと笑っていた。

エルマーナのお陰で周りの気温がだいぶ下がった気がした。


「エル、そこに座ってくれる?これからあなたに"人の道"を説くから」

「うそーん」


熱くて死にそうな火山のなか、アンジュの"人の道"についての説教がはじまった。

誰がとめても、アンジュは「あら?あなたも聞きたいかしら?」の一点張り。
エルマーナはかなりアンジュの地雷を踏んでしまったらしい。


「ここでアンジュの説教が終わるのを待つのはかなり体力を消費するので、ここはスズシィーく待ちましょう」

「いや、そうしたいのは山々だけど・・・どうするの??」

「大切な事を忘れては居ませんか?そう、我らがイリアを!!!」

カンナがイリアにスポットライトを向けると、きょとん顔。
イリアはまだしもルカまできょとん顔。

リカルドだけ「また、くだらん事を」と呟いた。

「あぁ、もう、イリアの属性魔法を使うんですよ!!スプレッド!スプレッドしましょう!!」

「えぇ・・・だってそれカンナが涼しくてもあたし熱いじゃん・・・」

「一回やりましょう?やってみましょう??さぁ、自分に向かって、せーのっ「スプレッド!!!!!!」

イリアがそう叫んで瞬間、カンナに向かってもの凄い水圧の水が突っ込んで来た。

「え、ちょと、つよ・・・オグェ!!!」

スプレッドは見事カンナにド命中し、水圧にぶっ飛ばされた。


カンナは前方に吹き飛ばされ、みんなより上の方まで登っていたスパーダに激突した。

「あだぁっ!」

2人一緒に地面に突っ伏す。
いきなりカンナに激突され、水浸しにされ、訳がわからないスパーダは怒鳴った。

「オイコラァァァ!!!んだよ人がせっかく前世の記憶を思い出してる時に・・・ってオマ!!!!!」

スパーダはカンナを見ると顔を赤くして目を背ける。

「すいません・・・。イリアが水圧MAXでスプるから・・・ってスパーダ・・・何、目を背けてくれてるんですか」

「・・・ったく・・・お前は、本当に馬鹿なの・・・?そんな格好で行ったらまたアイツに何されっかわかんねぇぞ。」

カンナはスパーダの言葉に首を傾げながら自分の格好を見てみた。

「・・・?別に何もおかしくは・・・っ!!!!!!」

カンナはやっと自分の過ちに気付いた。
通気性抜群の薄手のシャツのせいで下着が透けてる。

「ひゃあっ!!!こ、これは逆セクハラや露出狂ではなく!!!あくまでも事故!!!ただ単にトLoveるっただけで!!!!」

カンナはあわてて自分の胸元を隠した。

「バカやろ・・・ちょっと待ってろ」

スパーダはみんなのいる下まで下りてまたカンナのところまで上がって来た。

「ホラよ」

カンナの肩にかけられたのはアンジュのケープだ。ちょうど胸元が隠れる。

「これでアンジュは涼しくなってお前は暑くなって一件落着だな」
「いや、どこが・・・でもまぁ、露出狂よりもマシですね。ありがとうございます。」


スパーダは、にやりと口角を上げた。目線がカンナの胸元に移る。

「まぁオレはそのままでも良かったんだがな・・・・ってオイこらカンナ、その目潰しの手ヤメロ」




アンジュもそろそろお説教を切り上げて、先に進む事にした。





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