君のいる世界廻る星

□ベルフォルマ家七男専属メイド日誌
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「お前さぁ、その髪邪魔くさくねぇ?」


主人の夕食をテーブルにセッティングしている最中、ふと声がした。

主人のスパーダを見ると、偉そうに頬杖つきながら、動く度に揺れるカンナの髪を弄っている。


「…まぁ、そうですよねこんだけ長いわけだし」


ずいぶん切っていない髪の毛は腰の当たりまで伸びでゆらゆら揺れる。

昔から長かったので気にしていなかったが、こういう仕事で伸ばしっぱなしと言うわけにもいかない。

カンナは何を思ったか長いエプロンの紐をナイフで切った。

「!!?」

スパーダは突然の行動にビビる。

カンナは何くわぬ顔でその紐で髪をひと結する。


高く括ったポニーテールが肩下で揺れた。

「あー、すっきり!どうです?」

カンナはくるりと後ろを振り返った。


「いや・・・髪型事態は問題無いんだよ、ウン。いいよねポニーテール。問題はさ、そのエプロンだよね、片っ方めちゃくちゃ短くなっちゃったけど良いの・・・?」

「ああ、これですか。確かにシンメトリーじゃないと変ですね。じゃ、こうしましょ」


カンナはナイフでもう片方のリボンの紐を切った。

そして一度結んだ髪を解いて、今度は二本の紐でお下げにする。

「これで完璧なシンメトリーですね!さ、坊っちゃんご飯食べちゃって下さい、早く片付けたいんで」


「いやお前って本当に・・・野生的だよな。フツーお前くらいの年頃の女、色々気にすんだろ」

スパーダは前菜をつまみながら言った。

「あー、そうなんでしょうね。でも自分まだお給料も出てないんでこれで十分です。・・・そういえば、料理の説明した方がよかったです?すっかり忘れてました。」

「いや、いらねぇよ今さら!!!」


カンナがベルフォルマ家で働き初めて1週間。
スパーダが執事長に頼み込み、無理やり働いている。
だがなかなか仕事には慣れてきたし、友達も出来たので暮らしは順調。

毎日が楽しい。


「坊っちゃん、今日仕立て屋来るって言ってたのにまたボイコットしたでしょう。・・・明日坊っちゃん1人だけの為に来てもらうのはさすがに気が引けるんで、一緒に行きますよ」

スパーダの食後の食器をカートに片付けながら、カンナが言った。

「服なんて一杯あんだろ、まだ行かなくてもへーきだよヘーキ!」

「平気じゃないですよ。この前のケンカでジャケットおもいっきり破いたじゃないですか。・・・なので、逃げないで下さいね」

そういえば・・・と思い出したような顔をするスパーダにカンナはそう言い付け、彼の部屋を後にした。


翌日。


二人はベルフォルマ行き付け、レグヌム有数の高級仕立て屋へと向かった。

「うわぁ・・・生地だけでこんな値段するんですね・・・それにオーダーメイド専門って、どんな事件ですか」

「全部が全部オーダーメイドなんてしてねぇよ。あのジャケットはたまたまここで作ったやつだったんだよ」

スパーダは腕やらなんやらメジャーで測られている。カンナはそれを物珍しそうに見ていた。

「はー・・・成る程・・・ほぉー」

「んだよ、そのアホみてぇな声はよ、恥ずかしいからヤメロ。あっちのご婦人見てんだろ」

「だったら、その乱暴な言葉使いもよして下さい。そっちのご主人ガン見ですよ・・・じゃあ、自分市場で買い物に行って来るんで、待ってて下さい」

カンナはスパーダを残し入り口へ向かう。
執事長についでにおつかいを頼まれていたのだった。

「お、おい、オレも行く!!!!」

「すぐ戻りますから待ってて下さい。」


それだけ言い残して出ていくカンナをスパーダはもどかしそうに見送った。

(くそ・・・今日はこの後街を二人でうろつく予定だったのに・・・買い物って事はすぐ帰るって事じゃん・・・!)


そんなスパーダは、はっとして何か思いついた。

すぐに店員を呼ぶ。


「はい、何でしょうかベルフォルマ様」

「あーあのさぁ、今すぐちゃちゃっと紐・・・作って欲しいんだけど」

店員はキョトンとする。

「紐・・・とは。あの、何用の紐でしょうか・・・?」

「アレだアレ。髪の毛結ぶのに使う紐だよ、紐」

スパーダの謎のジェスチャーは置いといて、店員はパァッと明るくなった。

「あぁ!リボンの事ですね!リボンと一言に言いましても、色々ありまして・・・」

店員はスパーダに色んな形や素材、そして色のサンプルを見せてきた。

「あーよくわかんねぇわ。シンプルで清楚な感じで適当に作って。色は・・・・これで。お代は今払うから、急ぎで頼む。」





カンナが買い物を済ませ店にむかうと、すぐにスパーダを見つけた。


「坊っちゃん、お待たせしましたっ!」

「おっせぇよ、お前主人30分待たせるとかスゲくない!?スゲェわ!!!」

スパーダは待ちきれず、店の前で待っていた。

「すいません、ちょっと混んでて。オーダーすみました?」

「あぁ。いつもより良い生地で作らせて、家に請求しといたぜ」

スパーダはどや顔。

「・・・ささやかな抵抗は良いですけど、すぐに破かないで下さいよ。・・・って、その袋なんですか?何か買ったんです?」


カンナはスパーダの手に持ってる袋に注目した。可愛らしいリボンがついてる。

「お、これか?これは俺様から、これから馬車馬のように働く従者への手付けだ。お前にやろう」

可愛らしい袋をカンナに押し付けて、変わりに買い出しの荷物を奪った。

「だれが馬車馬のように働きますか、そんなウザい喋り方の主人は嫌です。・・・開けていいですか?」

「いやっいいから、あ、後で見ろよ、今はあけんなよ・・・オレのいない所で・・・ってぁぁぁ!!!!」

カンナはスパーダの言うことは完全シカトで一瞬で袋を破り開けた。

中には二本の真紅のリボン。

「わぁ!!!!これ!!リボンじゃないですかっ!!!もらっても良いんですかっ??」

「あ、あぁ。エプロンの紐じゃあまりにも見苦しいからな。それ付けろ」


「うわぁ!!本当ですかっうわぁーこんな立派なリボン・・・嬉しいですっ自分こんなプレゼント初めてですっありがとうございます!!!」

カンナはキャッキャとはしゃいで、その場でそのリボンで髪を結びなおした。


(・・・お、なんだ・・・案外かわいい反応じゃねぇか・・・)


「ど、どうでしょう・・・か」


「やっぱ似合うな。お前にはなんか赤が良いと思ったんだよな。髪ピンクだし」


カンナは珍しくにっこり笑った。

「あは・・・本当に嬉しいです!宝物にしますね!!」



心なしかカンナの頬が赤くて、うっかり抱きしめそうになったのはさておき。


カンナの反応に、スパーダは満足そうな笑顔を浮かべた。




「さて、じゃあこの後はお茶でもしねぇ?」

「は?駄目です。この後は坊っちゃんお稽古ありますから、あと勉強も」

「やだ!無理!リボン買ってやったじゃん!!」

「それとこれとじゃ話が違います。」

「ウゼェ!!やっぱソレ帰せ!!!」

「嫌ですっこれはもらったんです!!!!自分のです!!!」

「じゃあ、せめて勉強をカット・・・」

「そうですね、お稽古で自分に勝ったら考えます。あくまで考えるだけですけど。」

「ハァァァァ!!?テメェなめやがって!後で見てろ、ヒィヒィ泣かしてやっからな。んでお前負けたら「ご主人様っわたしもうだめっ・・・ゆるして・・・・あっ!!!ちょっと・・・そこは・・・らめぇぇぇ」って言わせるからな」

「・・・立派なセクハラですね」

「おい、距離とるな、もっと近付けよコラァ!!!!」










*

なんだこの終わり方・・・ノーコメントで(`・ω・´)!←

更新するものが無いので帰り道で即席ショート。
シリーズ化しよっかな(´∀`)






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