君のいる世界廻る星

□No.16
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「青い海っ白い砂浜っそしてそして」



「ハッピーなカラーしたトロピカルやぁ〜!!!!!!」



エルマーナはそう叫んだと思うと、青い海白い砂浜そっちのけでフルーツプランターへ猛ダッシュして行った。


「あらあら」

そしてそれを見送るカンナその他一同。

彼らは今、南の島国ガルポスへ来ていた。
亜熱帯気候のこの国は蒸し暑く上質なフルーツが良く育つ。
レグヌムの植民地と聞いていたが、住民は穏やかで戦争とは無縁の暮らしだ。


「・・・先輩て南国似合わないですね。凄い浮いてますよ、張りつけたみたいに!」

もともと青白いリカルドだが南国にいるとさらにそれが引き立った。

「黙れ。俺は南国は好かん・・・」

「あぁそうそうあんた戦場でしか生きれない男だもんね〜」

「肌真っ白だしな。ここで少し焼けば??ちょっとは健康的な小麦色になっかもなヒャヒャヒャ」


イリアとスパーダがリカルドを囲むようにしてニヤニヤと茶々を入れた。
リカルドは眉間に深く皺を作る。
「プッ・・・」

アンジュの吹き出した笑い声に、スパーダイリア、そしてリカルドが振り向く。
アンジュは小刻みに震えながら笑いを堪えていた。

「リカルドさんが・・・小麦色・・・ププ・・・」

「オイ、セレーナ。笑うなとは言わん。せめてその押し殺した笑いはやめてくれないか・・・」
傷つくから・・・。

切なそうなリカルドを尻目に、アンジュはすいません連呼しながらやっぱり笑いを堪えていた。
どうやら何かが彼女のツボに入ったらしい。


「なんやてぇ!!!!んな事あるかいなぁァァァァア!!!!!!」

区切りのよい所でエルマーナの叫び声が、遠くから聞こえた。

「なんでしょう・・・行ってみましょっか」

カンナは先頭を切ってエルマーナの元へ走る。
アンジュは逃げるようにカンナを追いかけ、それを見送ったイリアとスパーダはリカルドを慰めながら歩いた。

「気にすんなよ、ちょっと人より小麦色がにあわなすぎるだけだろ」

「そーよそーよ、気にしたら負けよ。男は玉砕してナンボ。ルカのようにね!!!」


その二人の背後からスゥッと影が現れた。涙目のルカだ。

「イリア、忘れてると思うけど僕いるよ・・・?」

「うげっ!!!!」






フルーツプランターの前ではエルマーナがうなだれていた。
それと同時に視界に入って来た荒れ放題の畑がその理由を物語っていた。

「・・・フルーツ・・・食べれへんねんて、あの犬男が・・・畑荒らしよるから・・・」

「犬男?」

「ホラ、アレや前に鍾乳洞で会ったやろ・・・ってカンナ姉ちゃん犬に喰われとったから覚えてへんのやね」


・・・鍾乳洞、あの二匹の犬の事だろうか。
エルマーナの言うとおりあの時カンナは犬に噛みちぎられそうになり挙げ句の果てに気を失っていたので詳細は不明だ。

「ふむ・・・あのアルカの小僧が休暇を取りに来ているだけとは考えづらい。おそらく俺達を待ち伏せていたのか・・・それか他に要があったのか・・・」

「・・・とにかく、何かあるのは確かみたいですね。犬男さんに会いに行きましょう」

アンジュの言葉の後に一瞬の沈黙。何故かリカルドが遠い目をした。

「・・・あぁ、確かにそれには賛成だ、だがセレーナ。何故俺の目を見ない」

アンジュは確かに露骨すぎるくらいにリカルドの反対方向をむいている。

「いえ、何も・・・・」

と言いつつもリカルドを一切視界に入れないアンジュ。
リカルドはわざとアンジュの視界に入り込んだ。

「ブフゥ!!!!」

アンジュは盛大に吹き出した。

「悪魔かァァァァア!!!!天使のような悪魔の笑顔カァ!!!そんなに俺を傷付けて楽しいのかぁ!!!」

「ちょ!!!!先輩そんな興奮しないでくださいぃ!!!」

珍しく興奮しているリカルドにアンジュはさらに爆笑。その中間でどうにか二人を止めようとするカンナ。


「なんやのん・・・暑すぎてとち狂ったんちゃうの・・・ウチそんな元気ないで、フルーツ食べれへんかったもん・・・」

エルマーナはエルマーナで燃え尽きているし、このカオス状態をその他3人は息をのんで見守っていた。

「お、大人たちが平静を失っている・・・」

「なぁ・・・アレってもしかして俺のせい??」


元はと言えばスパーダの小麦色発言が元凶。ルカとイリアは深く頷いた。


しばらく笑って落ち着いたアンジュは、燃え尽きたリカルドをフォローするのに一苦労。

その間、村の人に話を聞いてみるとジャングルにそれらしきものがあるとか。
だがそもそもガルポスの人々は、信仰宗教に興味ゼロで全く興味もないらしく、漠然とジャングルのどっかくらいアバウトにしか教えてくれなかった。

「まぁ、しょうがないので・・・ここからは自分たちで探しに行きましょっか」

「せやな、フルーツが無いと知ったらこの島にはもう用はあらへん。さっさと終わらせて次いくで」

エルマーナは少々キレ気味。彼女の中で国の真価を問うものはどうやら食らしい。

「え〜せっかくのリゾートなんだからゆっくりしようよ!僕ガラムで寝たきりだったし・・・」

「あんたリゾートって柄じゃないじゃない、水着とか似合わなそぉ〜」

ルカの珍しい我が儘にイリアは指を差して爆笑。
そこへアンジュ。

「確かにルカ君肌白いから海水浴ってイメージないよね。肌が白いといえばリカルドさんも・・・・・ブファ!!!!!」

「わざとだろォォォ!!!今の絶対わざとだよな!確信犯だろ!!!!」

さっきので罪悪感を感じたのかリカルド守護のスパーダ。

「いや、良いんだベルフォルマ。これはセレーナをちょくちょく戦闘不能にさせてしまう俺への罰なんだ。ならば俺は喜んでこの罰を受けよう」

自称仕事熱心は使命感に満ちた顔付きで静かにそう言った。

「おま!!!それどんな苦行!!?てかカッコ付けんな!!!アンジュはもうリカルド弄るのやめたげて!!!弄られキャラじゃないからこの人!」

「そうですよ、アンジュ。先輩はこれでも海水浴好きなんですよ。前なんて海で全力バタフライしてましたから」

「ブフゥ!!!!!!!」

カンナの追い討ちにアンジュは等々笑いすぎて崩れ落ちた。

「黙ってカンナさん、お願いしますから黙ってて」

スパーダは終始突っ込み続け、一行がリカルドネタに飽きた頃にはもうジャングルにたどり着いていた。



「ここがジャングルかぁ、なんだか変わった場所だね。見たことのない植物ばっかり」

ジャングルに生い茂るビビットな花や、蔦、亜熱帯特有の植物たちは王都育ちのルカには物珍しかった。

「うえ〜歩きにくいし、蒸し暑いし、あたしここキライっ!!!」

癇癪を起こすイリアを余所に、エルマーナやルカは興味津々。

カンナはふと木の幹に目線をずらす。
そこには黄金に輝く巨大なカブト・・・。

「わーっ見てくださいっ!!!でっかいカブトムシ捕まえましたぁ」

カブトムシを高々と掲げてどや顔のカンナ。

リカルドが目を細める。

「それは大変珍しいタイプのカブトムシ、ヘラクレスオオカブトだ。ちなみに12000ベルで売れる。夏しかとれない」

「え・・ベル・・・??」

ルカはなぜか不信感を覚えたが、カンナの喜びの声にかき消された。

「すごーい!!!この子は今日から兄弟にします。名前は・・・リセットさんで!」


「それどんなおいでよどうぶつの森!!?やっぱそうだ!さっきおかしいなって思っだんだよ!!」

「えぇ〜姉ちゃんだけずるいわぁ、ウチも何か捕まえて来る!!!」


エルマーナは草をかき分け、ずんずんと奥へ入って行ってすぐに草の茂みに消えてしまった。


「あぁ、もうエル、離れちゃ危ないわよ」

アンジュが少し呆れて、エルマーナを連れ戻そうと進むと茂みの向こうから、「えいっとうっ!ばくりゅうけんやぁ〜」と、ユルイ掛け声。
それとセットで殴る蹴るの骨の軋む音。

もちろん嫌な気しかしない。


「アンジュ姉ちゃん見て!!!うちリセットさんよりでっかいの捕まえたでぇ!!!名前は・・・まだない!!!!」

エルマーナは巨大なトカゲみたいな恐竜の首をがっしりと抱え込んでいる。恐竜?は瀕死でくったりとうなだれていた。


「えーと、エル?それなんか違うんじゃないかな??」


「あれはガルポスオオトカゲ。残念だがベルでは買い取ってもらえん。」

「えっ!!!?まだそのネタ引っ張るの!!?ってわぁぁぁぁいっぱいでてきたよぉぉぉ」


気付くと、周りをガルポスオオトカゲの群れに囲まれていた。


「ここ、どうやら巣だったみたいですね・・・あっちもただで帰してはくれなさそうです」

仲間を傷付けられ、鼻息荒く此方を狙う彼らの様子にカンナはため息をついて武器を構える。

「エルマナ!!戻って下さい!戦闘開始です!」






「そーれっと!」


カンナが最後の一発を打ち込む。
あたりにはもう敵はいないようだ。

「やりましたね、皆さん無事ですかっ???」

カンナが頭を上げると、そこには誰もいない。

前も後ろも右も左も、影すら見えず、カンナはひとりぽつんとジャングルの真ん中に突っ立っていた。

「・・・しまった・・・はぐれた」

そう呟くも、帰って来る言葉は無し。

今動くのは危険。すれ違いになりそうだし、そう遠くまで来ていないようだ。

でもただ待つだけで置いていかれてはたまらないので、カンナは昔リカルドに習った狼煙を上げる事にした。

「先輩の事ですから船の時間がどうとかで平気でおいてかれそうですからね・・・」

カンナがぶちぶち文句を呟きながら燃えそうな木の枝を拾っていると、誰かの気配。

カンナは感覚を集中させる。

しんと鎮まりかえるジャングル、聞こえるのは風に揺れる葉の音と遠くで虫の羽ばたく音。

どことなく空気がぴんと張り詰めた。


そこへ木葉を踏みしめる音。
素早く反応し、先に動いたのはカンナ。

右後ろへ銃を向けた。
自分へ襲い掛かる複数の影に引き金を引こうとするが、カンナはハッとしてとっさに止める。

だが、影は止まる事なく、カンナに襲い掛かる。

直後、頭部に強い刺激が走り、カンナは意識を手放した。






「カンナー!どこだー!」

「カンナーさっさと出て来なさいよぉー」

「姉ちゃんはよ来てーウチ腹へってもぉてかなわんわぁ!」


彼らの叫びもむなしく、その声に返事はない。

カンナとはぐれて数時間。
一同は必死に捜索を続けていたが、一向にカンナは見つからない。

「ったくアイツどこにいったんだよ・・・」

イライラそわそわとジャングルをやみくもに歩き回るスパーダを見兼ねて、リカルドが口を開いた。

「落ち着け、ベルフォルマ。あいつなら大丈夫だ、昔、アイツにこう言った事があるからな。

『仲間とはぐれたらからと言って動揺し、やみくもに仲間達を探してはいけない。焦りは不安を呼び、やがてさらに孤独の深みに落ちて行くからだ。
まず冷静になり、仲間を信じる事が大切。仲間たちと目指した目的の場所へ向かうのだ。たった一人でもな。

みな、目指す方向はひとつ。

ならばまた必ず会える。





ゴールでな』

と」


「うぜぇぇぇぇなんだそのドヤ顔はよぉ!だから!?だから何!?何が言いたいの???」

「つまり、カンナは目的地だった記憶の場を目指してる可能性があるって事?」

キレそうなスパーダをなだめるように、ルカがそう問う。

「その通りだ。俺達も当初の目的だった記憶の場を目指そう。・・・明日な」


「ちょっと待てッ!!明日じゃねぇよ、何ちゃっかり一晩またいでんの??」


そこへ蒸し暑さで参っていた女性陣の意見が入る。




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