君のいる世界廻る星
□雨だれに染まる頬
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物凄いクラッシュ音の中、荒れ狂う馬とそれに繋がれた車の間をくぐり抜けた。
危機一髪だったと胸を撫で下ろすと、腕の中もごもごと動く生き物を思い出す。
ケロッとした顔で鳴く仔犬に能天気な奴だと呆れながらもホッとして離して。
「大人しく帰んな」
とてとてとゆっくり路地に消えて行く仔犬を見送りながら、道路に視線を戻すと、お使いに頼まれていた卵がグシャグシャになっているのを見てスパーダはがっくりと肩を落とした。
「アイツ怒るんだろうなぁ・・・」
◆
「ハァァァ!!?何しでかしてんですか!?卵を買って戻って来るだけなのに、何をどうしたらこんな有様になるんですか!」
「イヤヤヤ、スミマセン、ホント申し訳ないデスカンナサン」
紙袋から滴るべとべとの黄身を見て、カンナは大層ご立腹のようで。
冷たい目をして睨み付けるカンナに、スパーダはタジタジだった。
事件?はアンジュの「あーん、今日はなんだかチーズのトロトロオムライスが食べたいなぁ」から始まった。
気分で要求しだしたアンジュを黙らせるために、今日の夕飯は満場一致でオムライスと言う事になったのだが、
間の悪い事になんと卵を切らしていたためにジャンケンで負けたスパーダが買い出しに行って、戻ってきたらこの有様だと言うことだ。
「イヤ、待って、オレはわざと割ったとかじゃなく仔犬の命を救ったと言うちゃんとした理由があんだって!」
「なるほどね、仔犬を助けてその代わり卵を犠牲にしたと。立派ですさすが坊っちゃん」
「おいお前信じてないだろ。」
カンナは片目を細めて、感じ悪い。
「別に信じないなんて誰も言ってないじゃないですか」
なぜか偉そうな彼女にムカつき始める。
「そもそもおかしいだろがよ、俺主人、お前召使。なんで俺がお使いいかされてんの」
「そんなんジャンケンで負けたからじゃないんですか・・・って別にどうでもいいです。自分買ってくるんで」
そう言って出て行くカンナ。
またか、
と思う。
カンナには口喧嘩になると必ず途中放棄し逃げるという癖がある。
あいつはあいつなりに自己完結しているのだろうとは思う。
だが白黒はっきりさせたいスパーダとしてはこんなおさまり方は不本意。
殴り合ってそのあと握手の方が何倍もスッキリするだろ。
まぁ、相手はカンナ。常識を逸脱した女ではあるが、やっぱり女。殴る訳には行かないが、このクソウゼェ雰囲気をスッキリさせようじゃないか。
「・・・何でついて来るんですか」
走るだけでなく歩くのも速いピンクに追い付くと、案の定超うざったそうな顔。
こいつはさ、俺に可愛く見られたいとかさ、そういうのは無いんだろうか。
「何ってお前、一人じゃ卵持ちきれねぇだろ」
「いや持てますから。スパーダ居ると割れない卵も割れるんで、帰ってもらってかまいませんよ」
「お前っ何でそういう事言う!!?自分がどれだけ冷酷な言葉を吐いてんかわかってる?お前言われたら絶対傷つくからね」
横でもしゃもしゃ言うスパーダにうんざりしてカンナはとうとう根を上げる。
「あぁぁっもう、うるさいんですよギャーギャーと。わかりましたよ自分が悪かったですって!何すりゃいんです!」
カンナの降伏に勝ち誇り、背中をバシバシと叩いて来るスパーダ。
「言ったな、んじゃあチューしろチュー!」
「・・・・・えっ」
満面の笑みを浮かべるスパーダに疑いの眼差ししか向けられない。
何を言っているんだろう彼は。
「えっじゃねぇよ。俺優しいからそんくらいで許してやるってば、ホラホラホラ」
どんどん顔を近付けて来るスパーダに下がるカンナ。
これ以上は下がれないように強く腰に腕を回される。
「ちょちょスパパパや、やめてくだっ・・・・さいっ!!!!!!」
しつこいスパーダに、とうとうビンタを食らわしてやる。
渇いた音が響き、よろめくスパーダを見てやってしまったと焦るカンナ。
「いってぇ・・・叩くかフツー主人なんですけど」
涙目でよろめいた体勢を持直しながら恨めしそうに言うスパーダにとっさに駆け寄る。
「す、すいませんっ!大丈夫ですか・・・」
「大丈夫じゃねぇよ。深く傷つきました。冗談だったのに・・・」
あわよくば、キスしてやろうと思ってたのに。
「すみませんってば・・・でも、急に寄ってくるから・・・」
心なしか顔の火照ったカンナに意地悪心が芽生える。
ちょっと脅かしてやろうか。
「なんだよ、そんな慌てる事でもないじゃん。・・・もしかしてカンナはじめて?」
「ぬぁっ!!!?」
さらに顔が赤くなるカンナに笑いが込み上げる。
何、こいつめっちゃ可愛いんですけど…!!!
「何だよ、それなら俺がちゃんと、リードしてやんないと、な」
カンナの細い首に手を添えて、顎を持ち上げる。
いきなりの行動に驚いて目を真ん丸に見開いて、頬を真っ赤に染めるカンナ。
「・・・・・っ!!!」
薄い桃色の唇は驚きで言葉が出ず、変わりに息が漏れる。
・・・やべ、もうこのまま、いっちゃっても良いかな、
冗談半分でからかってやろうと、回した腕が、勝手にカンナを近付ける。
鼻と鼻がくっつきそうな距離に、もう駄目だ、と唇を重ね・・・・ようとした瞬間、
けたたましい雷鳴とともに打ち付けるような雨が二人を叩いた。
「もぎゃァァァァァァァ!!!!?」
冷たく強い雨とカンナは小動物のように飛び退いて瞬時にスパーダから逃げる。
頭冷やせって。
とでも言うような突然の通り雨に、怒鳴り散らしたくなるのを必死に押さえる。途切れそうになった理性と一緒に。
ずぶ濡れで戦闘の構えをとるカンナに、少しやりすぎた(途中から本気)と反省しながら近づく。
が、怯えるカンナは後退り。
スパーダはため息つくと、カンナの手首を掴んで引っ張る。
「ちょっ、な、何をするつもりですか!!」
「バーカ何もしねぇよ。雨宿りにあの店まで走んぞ」
「えっちょ、わっ!!!!」
返事も聞かないまま走りだす。
強い雨はあっという間に2人をずぶ濡れにして、
体に張りつく服が気持ち悪い。でも全身が濡れてしまったからもう半分は吹っ切れてしまった。
店の屋根の中に逃げ込む。
さすがにびしょ濡れで店内には入れないので、玄関先で服の水を絞った。
「欲求不満!!変態!!スケベ!!近寄らないで下さい!」
「冗談だってば、もう本当にごめんて、」
「冗談で、あんな事・・・・・さ、最低です!!!」
泣きべそかいて怒るカンナが可愛いすぎて抱きしめてしまおうかという心の葛藤。
必死に振り払い、弁解する。
「冗談じゃねぇって、俺はお前以外の女には冗談でもあんな事ぜってぇしねぇよ。」
「ハァァァ!?何ドヤってんですかうざっ!!」
「お前、この野郎。俺の懇親のセリフをウザイと言ったな。もういいわ俺お前にこのジャケット貸してやろうと思ったのに、貸してやんない」
「別にジャケットなんかいらないですよ!」
「ホォー、あれ、見てみ」
スパーダの指先す方を見ると窓ガラス。
にはカンナの全身が映されそこに映るのは雨にずぶ濡れにされ、が下着の透けた自分の姿。
「ちょおおおおおお!!!!!!早く言って下さいよ!」
またもや泣きべそなカンナにスパーダは等々笑った。
ジャケットを脱いでカンナに羽織らせてやる。そのまま後ろから抱き付く。
「さっきはごめんな、ちょっと脅かそうとしただけなんだ本当に」
スパーダは表情こそ見えないけど、真面目に誤っている様で。
「・・・スパーダ、」
カンナはくるりと振り替えるとスパーダの襟を掴み引っ張る。
腰を折って屈んだスパーダの頬に一瞬唇を押しあてる。
「!!!!えっ!」
あまりの一瞬の出来事に目を点にするしかないスパーダ。
だがやっぱり顔の赤いカンナを見て、夢じゃなかったと笑った。
「仕返しです。どうです、ムカつくでしょ」
「バーカ、嬉しくて死にそうなんですけど」
【雨だれに染まる頬】
*
その後、2人は仲良く帰って気付きます。
あ、卵買うの忘れた。
何の話なんだろう。スパーダとひたすらじゃれてらぶる話です。←
一応リクエストの「スパーダでほの甘」・・・です、これは・・・ほの甘なのか!いつものように落ち無しの謎な話になってしまいましたが、どうでしょう(´・ω・`)とにかくスパーダと夢主ちゃんで書きたいリストから引っ張って来たんですが(自分が楽しんでる)
ダメじゃこりゃ!でしたらすぐ言って下さい持てる力を持って全力で書き直します!!!!!←