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□*アロマレシピ
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「…いい匂いがしている」

リクルートの部屋に入った途端、ふわりといつもは感じたことのない芳香が漂ってきた。

――芳香剤?いや、違うな…

ソファに近づくとパジャマ姿のリクルートは風呂上りらしく、まだ濡れている髪をタオルでゴシゴシと拭きながらパソコンに向かっている。

「ああ、前にジャクリーンのエステで貰ったアロマオイルが出てきたから
風呂上りにマッサージしたんですよ。たぶんその匂いです。」

すみませんが仕事もうちょっとなのでその辺に座っててくださいね、と
リクルートはパソコンの画面から視線を動かさず答えてくる。

了解した、と答えてソファに腰掛けたシスターから、ちょうど見下ろす位置にリクルートは座っていた。
ローテーブルにノートパソコンを置き、床に直に座って作業をしている。
風呂上りのせいだろう、うなじや白い頬はほんのり色づき、普段はシャツに隠れて見えない鎖骨が今夜は惜しげもなくパジャマの襟からのぞいている。
カタカタと小気味のいい音をさせてキーボードを叩いている、白く細い指先。
胡座に組まれた脚の先、ズボンの裾から覗いている形のいいくるぶし。続いているかかとは白くて小さかった。
リクはどうして、男のくせにどこもかしこも白くて滑らかで柔らかそうなのだ。
そして、部屋に入ったときから気になっているこの香り。
何か柑橘類に、花の香りが混じったような…
呼吸の度に肺を満たし、ただの香りだというのに気分をおかしくさせていく。
それにしても…
ああだめだ。私はこんなに堪え性のない人間だっただろうか。

「…うわっ、待ってって言ったでしょう!」

シスターは突然立ち上がると慌てるリクルートを構わず後ろから抱きかかえてパソコンから引き離し、ソファへと下ろした。
手早く修道服を脱ぎ捨て、覆い被さってリクルートの白い首筋に唇を押し当てる。
先ほどから気になっていた香りが、より一層強くなった気がする。

「シ、シスター、なんか雰囲気こわ、」
「……」

こういったことに不慣れなリクルートを怯えさせないよう、幼子をあやすように撫でたり口づけたり
リクルートの気持ちを最優先にしてひたすら優しく進めていくのが常なのだが、今はどういうわけだか自制が効かない。
恐い、と正直に口にしたリクルートの言葉も無視してシスターは進軍を続ける。
噛み付くように唇を奪うと、そのままパジャマのボタンを外して胸に腹に、手を這わせる。
もともと肌理が細かく滑らかな肌が今日はさらに、掌にしっとりと吸い着いてくるようだ。
撫でるたびに、また香りが立ってシスターは自分の内の衝動が煽られるのを感じる。

この体勢では抵抗しても無駄だと覚ったのか、押し返そうと肩の辺りで突っ張っていたリクルートの腕の力が抜け、
おずおずと背中に回されたのを感じてシスターは唇を解放した。

「どうしたっていうんですか、もう…」

はぁ、と大きく息をつき、見上げてくる黒い瞳が涙に濡れて潤んでいるのを見てまた心拍数が上がる。

「私の為か?」

何がですか?というリクルートの問い返しには答えず、
再び首筋に舌を這わせる。
ビクッと跳ね上がる四肢を押さえつけ、鎖骨をきつく吸って赤い跡をつけてしまう。

「こんないい匂いをさせて。肌を潤わせて。…私を誘っているのだろう」
「ち、違いますよ!オイルが残ってたのをたまたま見つけたから…、あっ、んっ…」

胸の突起を舌で弄られ、同時に伸びてきた手で下肢を愛撫される。
シスターの手順は性急で強引で、抗議の声を上げようとしてもその度に唇はキスで封じられ、リクルートはあっという間に体を開かされてしまった。

シスターの荒々しい侵攻に、繋がった部分はいつもより痛むし、それにひどく熱い。
それでも徐々に湧き上がっていく快感に浮かされながらせめてもの抵抗でリクルートはシスターの背に思い切り爪を立てた。

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