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□デート(拍手御礼文)
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たとえば、ひと仕事終えて今ゆっくり腰を落ち着けているような、雰囲気の良い喫茶店。
少し薄暗い位の照明の下、古いけれど手入れの行き届いた調度品に囲まれ
サイフォンで丁寧に淹れられた珈琲を味わえる、お気に入りの店。
他にも、仕事の付き合いで連れて行かれる夜景で有名なホテルのバーや、
隠れ家みたいなフレンチの店。枯山水の庭が付いている料亭も。
良い店に出会うと、あの人を連れて行きたくなる。

そういうときは、以前部下のふりをしてもらう為にプレゼントしたスーツを着てもらおう。
あのスーツは、シスターにとてもよく似合っていた。我ながら、俺の見立ては間違いがない。
シスターはお酒が好きだし、料理上手だけあって食べることも好きだ。
きっと自分が気に入った店は彼も気に入ってくれるに違いない。
二人差し向かいで、もしくはカウンターに並んで、グラスを傾けて…

というところまで想像して、リクルートはハッと我に返る。

――それじゃ、まるでデートじゃないか。

意識した途端、カッと頬に血が上る。
カップをソーサーに戻す手が乱暴になってカチャンと音を立ててしまった。
「すみません」と謝ると、カウンターの中の店主が微笑みながら冷たいおしぼりを差し出してくる。
見透かされているようで恥ずかしい。

こんな妄想をしてしまうなんて。
俺はいつの間に、こんなに、シスターのことを好きになっていたんだろう。
自覚した途端恥ずかしくなったけれど…
いま隣にいるわけではない人のことを、あれこれ想えるというのは幸せなことなのかもしれない。

シスターとデートをするなんてこと、この先あるかないかわからないけれど
今この幸せな気分を持ち帰るために、サイフォンを買って帰ろう。
美味しい珈琲を淹れられたら、シスターはいつもの無表情をほころばせ、喜んでくれるだろうか…


………

(2011/10/05)

うちのリクルートさんはシスター大好きのようです。
脳内デートのお話でした。


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