Harry Potter

□マジー・ノワール
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「な…なにを……」

「──何と言った?」

「は…?」

「…今、貴様は何と言った?彼女のことを何と呼んだ?」



喉を杖先で脅すようにして突かれ、紅茶色の髪の少年が恐れをなした瞳で微かな悲鳴を上げる。

スネイプは暗い衝動を抑え付けようともせずに、少年の緩んだ襟元を掴み上げ、呪うように低い声で言い放った。



「もう一度、彼女のことをそんな風に呼んでみろ。─…貴様の存在をホグワーツの誰にも探せない場所に葬り去ることなど、僕には造作もないことだ」



容赦なしに震える身体を突き飛ばすと、床に倒れた少年はひいっと絞り出すように悲鳴を上げる。

脱兎のごとく床を這い、よろけながら部屋を飛び出していった。



階段を駆け下りる靴音を聴きながら、スネイプの怒りは未だ収まらない。

杖先から毒々しく黒い煙を緩やかに発しながら、彼は静かに瞳を閉じた。深呼吸をしようとしても、息を整えられない。



「──赦さない。リリーが穢れているなんて、誰にも言わせない」



唇を噛みながら唸る様に言う。彼は杖をローブのポケットに仕舞うと、後ろ手にカーテンをさっと引いた。

彼女を待たせてはいけない。なんとか心の凪ぐようにと努めて深呼吸しながら、彼は部屋の戸のノブに手を掛けた。






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