Harry Potter

□ヴォル・ド・ニュイ
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箒に跨った青年が、手を差し出した。彼のかける眼鏡のレンズが幾千もの星明りを受けてきらきらと煌めく。

リリーは微笑みながら、その手を取る。二人分の闇色のローブが風に煽られ翻る音が空気を打ったかと思うと、そこに二人の姿は無かった。

ローブの色と同化した闇空に向かって、真っ直ぐに溶け込んでゆく二人。散りばめられた宝石たちはあちこちでちかちかと輝く。銀色に揺らぐまるい月を目指して、彼はスピードをさらに上げた。

一際冷たい風が頬を打ち付け、長い赤毛を後ろに靡かせると、リリーは抱き着く背に頬を押し当ててゆっくりと瞳を閉じる。彼がちらと後ろを向いて言った。



「リリー、僕にしっかり掴まってて」



耳を打つ浮足立った声が、遠い追憶の中の声と重なった。瞳を固く瞑ったまま、リリーは小さく頷いた。

──セブルス。あなたは今、何をしているかしら。






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