Harry Potter

□交差するただその一点に
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自分と瓜二つの息子があの赤毛の少女と連れ立って歩く後ろ姿をこうしてただ引き止めることも叶わずに眺めているのは、少々複雑な思いだ。

血を裏切る一族とはあまり深く関わるな、そう教え諭そうとすれば眉根を釣り上げて反抗してくる。



「純血主義だなんて考え方はもう古いんですよ。父上、闇の時代が終わってからもう何年が経ったと思いますか?それなのに、あなたはまだ、闇の中にいる」



生き写しの顔にこうも非難されてしまってはぐうの音も出なくなる。結局のところいつも言い負かされるのは父親である自分の方で、息子は勝ち誇った顔でまたあの少女の手を取る。

ウィーズリー家の娘であるあの少女が初めてこの屋敷へ訪れたのはいつのことだったか。全くもって隙のない礼儀正しさに、あの理知的な母親の献身的な教育を垣間見た。

聡明な瞳と視線がかち合うことをただ恐れた。──既に遠く彼方へ追いやったはずの淡い想いが、意外にも近くで燻り続けているかもしれないことを自覚することが恐ろしくて。



「父上、もしもローズと一緒になることをお許しいただけないのなら、僕にもそれなりの覚悟はあります」



いつの間にか背丈が自分と並ぶほどになっていた息子は、生き写しの顔に不敵な笑みを浮かべてそう言った。自分には明らかに欠如していたものを、この子は与えられて生まれてきたのだなと、この時初めて思った。



「マルフォイの名を捨てます。──薄情なようですが、家と恋人とどちらを取るかと言われたなら、僕は迷わず後者を選択します」



平行線上で生きる道へ流されるしかなかった自分と、交わる道へと真っ直ぐにひた走るこの子とは、まさに雲泥の差だ。



初めはどこか薯臭い田舎娘だと思っていたのに、見違えるほどに美しく長じた赤毛の少女が──彼女の娘が、理知的な瞳におよそ合わないはずの無鉄砲さを混在させて微笑む。

きっと誰に反対されようと、二人は繋いだ手を離さずに、どこまでも同じ道を歩もうとするだろう。

それを若さだとは思わない。現に二人ともホグワーツで一、二を争う秀才であり、若気の至りと片付けられるほどの愚行を仕出かすとは思えない。

全てを賭けた恋。家も、名も、なにもかもを。



「さあ、父上。どうかお答えください。僕たちを認めてくださるのか、そうでないのか」



生き写しの顔が覚悟を湛えて静かに笑む。誰かが自分の成し得なかった過去を目の前に投写させているかのように思えて、どうしても直視することができなかった。









end.

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