Harry Potter
□世界の片隅
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「…でも、ウィーズリー家は『血を裏切る一族』と言われているわ。それはあなたも知っているでしょう」
「ああ、知ってるさ。…けれどそれがどうした?僕は君がウィーズリー家の人間だからって蔑んだりなんかしない。なのに君は、僕がマルフォイ家の人間だからという理由だけで僕を避けようとする……!」
握られた手にかかる圧力にローズは切なそうに眉を顰める。綺麗な涙を流すプラチナブロンドの青年を見下ろす瞳が、確かに揺らぎ始めた。
「…ねえ、スコーピウス。本当はね、私も怖いの」
椅子から身を乗り出して、ローズは目を閉じる。そのまま彼女の桜色の唇がスコーピウスの額に触れた。触れてすぐに離れた感触は名残惜しく、求める様にして彼はその身体を掻き抱く。
ローズの心音に耳を押し当てながら、スコーピウスは目を閉じた。ローズの胸元からは微かに薔薇の馥郁たる香りがする。彼女の誕生日に彼が送った薔薇の香水の香りだった。
「スコーピウスといつか引き離される時が来るんじゃないかと思うと、今こうして幸せでいるのが…私、とっても怖くて…」
プラチナブロンドの滑らかな髪を指でそっと撫でて、ローズが震う声で囁く。スコーピウスが彼女の腰に回した手に力を籠めて首を横に振った。
「……誰にも引き離させやしない」
「でも、血からは逃げられないわ。…そうでしょう?」
「逃げ切ってみせるさ。…ローズの手を放すくらいなら、僕は何もかも捨てて逃げるよ。君を連れてね」
そう言ってスコーピウスは彼女を見上げ、瞳を細めて笑う。
その笑顔がローズは何よりも好きだった。透き通った瞳いっぱいに彼女だけを映して、彼女の為だけに甘く頬を緩ませ、眦を柔らかくしならせるその瞬間が。
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