Mermaid's Series
□終焉
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長い間、孤独のなかにいた。
誰かに心を寄せても、いつか必ず離れていってしまう。
終わりがあることを知っていながら、一度想ってしまうと、いつか必ず訪れるその終焉を忘れほうけてしまった。
花のようにみずみずしい娘たちが、枯れ木のように萎びていくのを。
猛々しい友が、老いに朽ちていくのを。
時を減るごとに消耗していく魂の数々を。
おれはただ、見ていることしかできなかった。
時に哀しみ、憤り、すべてを忘れて途方に暮れながら。
五百年のあいだ。
「長かった……おまえを見つけるまで」
同じく人魚に人生を翻弄され、望まぬ不老不死を得た彼女。
おれには彼女しかいない。
彼女にもおれしかいない。
みずみずしくて勇ましい、少女と少年の性質の両面を併せ持ったような彼女。おれに添い遂げるかのように、いつも側にいてくれる。
……おまえだけは離れていくな。ずっと、側にいてくれ。
途方もなく長い五百年の生の中で、一番離しがたいと思える存在を、見つめた。
どうか終わりなど来ませんように。
すべてのものに訪れるという終焉など、忘れたままでいられますように。
end.