Mermaid's Series

□終焉
1ページ/1ページ



 長い間、孤独のなかにいた。
 誰かに心を寄せても、いつか必ず離れていってしまう。
 終わりがあることを知っていながら、一度想ってしまうと、いつか必ず訪れるその終焉を忘れほうけてしまった。
 花のようにみずみずしい娘たちが、枯れ木のように萎びていくのを。
 猛々しい友が、老いに朽ちていくのを。
 時を減るごとに消耗していく魂の数々を。
 おれはただ、見ていることしかできなかった。
 時に哀しみ、憤り、すべてを忘れて途方に暮れながら。
 五百年のあいだ。

「長かった……おまえを見つけるまで」
 同じく人魚に人生を翻弄され、望まぬ不老不死を得た彼女。
 おれには彼女しかいない。
 彼女にもおれしかいない。
 みずみずしくて勇ましい、少女と少年の性質の両面を併せ持ったような彼女。おれに添い遂げるかのように、いつも側にいてくれる。
 ……おまえだけは離れていくな。ずっと、側にいてくれ。
 途方もなく長い五百年の生の中で、一番離しがたいと思える存在を、見つめた。

 どうか終わりなど来ませんように。
 すべてのものに訪れるという終焉など、忘れたままでいられますように。




end.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ