いろいろ
□封じた想いで10のお題
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君はとても残酷だ
何故、それを俺に言うかな?
俺の気持ちに気付いてない
その一言で済ますには、君の言動は俺の心をあまりにも掻き乱す
まぁ、文句を言っておいてなんだけど、君の相談に一々真面目に付き合ってる俺も自業自得なんだけどさ…
俺が一番、誰よりも
無邪気に笑っている君が目の前にいる。
笑顔を向けられているのは、相馬。
相馬は表情の読み難い、所謂無表情で応対している。
あぁ〜!どうして倫ちゃんに、そう冷たい態度をとるかな!
俺なら優しくするのに。
まぁ、俺に優しくされたとしても、彼女の心には響かないわけだけど。
香久夜楼の一室。
部屋で寛いでいるところ、倫ちゃんがやって来た。
まだ日が明るいという理由で、倫ちゃんは相馬を稽古に誘った。
俺は…、まぁ、おまけで誘われた。
誘われないよりはマシだと思うことにする。
倫ちゃんのことを思えば、断った方がいいんだろうけど、 俺はそれをするつもりはない。
そこまで、俺は大人にはなれない。
「行きましょうよ、肇さん。ねぇ、野村さん?」
倫ちゃんが俺に振る。
最初に相談に乗ったのは失敗だったかな。
不意に思うけど、もう遅いだろう。
彼女はこの先、俺を恋の相談相手以上には見てくれない。
「そうそう!稽古にやり過ぎはないって!」
俺は努めて明るく振る舞う。
明るく振る舞えば振る舞うほど虚しくなるけれど、振る舞わなければ、俺の中の1本の細い理性がぷっつり切れてしまいそうだった。
「野村…。」
相馬が俺を睨む。
まるで余計なことを言うなというように。
贅沢者め。
心の中で舌打ちする。
人に思い、思われることが、一体どれだけ幸せなことか。
お前は考えたこともないんだろうな。
土方副長を心酔するお前には無理か。
たったそれだけのことで、一喜一憂する、この喜び、この苦しみ。
それをわかっていない相馬を好きな倫ちゃん。
どうして、相馬なんだ…?
心に渦巻く焦燥に歯噛みする。
―俺を好きになって―
それを言えば、きっと全て崩れ去る。
倫ちゃんとの関係も、そして恐らく相馬との関係も。
だから、言えない。
全てを失ってまで、自分の思いを告げる勇気がない。
相馬が贅沢者なら、俺は臆病者だろう。
確立されている、この場所。
恋の相談相手
この場所を手放すことが、恐い。
例え、倫ちゃんが俺を恋の相談相手以上に見てくれなくても。
彼女に拒絶されるくらいなら、この居心地のいい場所に甘んじよう。
そう結論付けた、臆病者。
ねぇ、倫ちゃん。
覚えておいて欲しい。
君を好きな人がここにいることを。
臆病者のくせに、俺に君が振り向きはしないかと、淡い願いを抱く情けない奴がいることを。
君にどうしようもなく惹かれている奴がいることを。
俺が一番、誰よりも君に焦がれてる。
臆病にも恋い焦がれてる。
◆あとがき◆
野村が妄想族☆になってしまいました(死)