途切れた微笑み
□途切れた微笑み 第六話
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先頭を切って馬を駆るディーンとジョシアは、早々に逃げ出した指揮官、ジョシアの父、フィリップと合流した。
「ジョシア!フィリップ殿を頼む!」
ディーンは剣を抜き放ちながら、後方にフィリップを護衛しながら後退するジョシアに叫ぶ。
「あぁ!すぐに行く!無茶はするなよ!」
ジョシアの声に頷きながら、ディーンは部下を引き連れて、遠くに見えるガフェリアの隊にトリスタンを進めた。
しかし、フィリップの後退で、隊を立て直したガフェリア軍は攻めては来なかった。
後方に、二部隊が控えていることを、先ほどの作戦会議で聞いていたディーンは、前方に見えるガフェリア軍が援軍を待っていると判断する。
「ジョシアは?」
ディーンはガフェリア軍から鋭い瞳を逸らさずに、脇に従えている部下に聞く。
「じきに本隊と共に到着します。」
部下の言葉に後方を振り返る。
大きな軍勢がこちらに向かって来ていた。
先陣を切っているのは、先ほど別れたジョシアと部下達。
はためくのはドーラロズの旗。
早かったな、さすがと言うべきか。
脳裏に過ぎるのは、ロズドアズ王子の美しい顔。
しかし、やはり納得がいかない。
聡明な王子が何故、戦になると予期出来なかったのか。
王子が姫をガフェリアに帰していたら…。
今にも泣き出しそうな、愛しい人の顔が頭を掠める。
ディーンは小さく首を振りながら目を瞑る。
今は、何も考えるな。
生きて帰ることだけを考えろ。
ディーンは目を開けると、ガフェリア軍に視線を戻す。
あの場にいるガフェリア兵は、本隊が到着するまでの時間稼ぎといったところか。
可笑しな巡り会わせだ。
殿部隊として出撃したディーンにその役目は既になく、決死の覚悟で突撃したガフェリア軍は、今度は援軍到着までの時間稼ぎ役となってしまうのだから。
「敵は深追いしていなかったみたいだな。」
横で声がした。
振り返らずともわかる。
ジョシアは喉で笑いながら言った。
「フィリップ殿の逃げ足が、予想以上に速かったのかな?」
ディーンは目だけをジョシアに向ける。
ジョシアは髪と同じ赤い色の瞳で、挑戦的な笑みを浮かべると、