途切れた微笑み
□途切れた微笑み 第六話
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「本隊もじきに到着する。俺達は一足先に、ガフェリアを掻き回すぞ。」
ディーンが頷くと、ジョシアは剣を引き抜き、後方に従う部下を振り返った。
「俺達はこれから、ガフェリア軍を攻める!
いいか、ドーラロズのためにとは考えるな!
生きるために戦え!
故郷に帰るために殺せ!」
ジョシアが剣を高く掲げると、部下達が一斉に鬨の声を上げた。
盛り上がる部下達を満足そうに見ていたジョシアは、不意にディーンを振り返り、真面目な表情をして言った。
「お前は下がれ。」
ディーンは驚いて目を見開く。
「どういうことだ?」
意味がわからず、ディーンが強い口調で聞き返すと、ジョシアは険しい光を浮かべた瞳でディーンを睨んで、部下達に聞こえぬよう小さな声で言った。
「生きて帰ろうとする副部隊長はいらない。お前は下がって怪我人が出た場合に備えていろ。」
ジョシアの小さな、しかし核心を貫いた声にディーンは息をのんだ。
俺は…。
何も言い返せずに、目を見開いたまま硬直しているディーンに、ジョシアは呆れたように息を吐き、
「お前は俺の部下だ。他の奴から見れば、お前は副部隊長だがな。部下を誰一人として死なせないのが俺の信条だ。例え、俺自身が死んだとしてもだ。もし、俺が死んだ場合は、俺の代わりにお前が指揮をとれ。」
「どういう意味だ!?」
真意がわからずにディーンは声を荒げる。
ジョシアは頭の回転の悪い友に苦笑すると、
「友からの贈り物だ。生きて帰って好いた相手に告白しろ。どうせしていないんだろう?」
ジョシアの言葉に、ディーンは苦し気に目を伏せる。
なんだよ、図星かよ。
友の思った通りの行動に、ジョシアは笑い出し、
「受け取るよな?」
ディーンは目を上げる。
どこか泣き出しそうな、苦し気な青い瞳。
ディーンはいつも好戦的なジョシアの言葉に、以前から思っていた、ある疑問を問うてみたくなった。
聞かなくても答えは大体わかってはいたが、ジョシア自身の口から唐突に聞いてみたくなった。
「ジョシア、お前、戦は嫌いだろう?」