途切れた微笑み
□途切れた微笑み 第一話
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ドーラロズ王国、筆頭貴族の公爵家、グラナート家に仕えるようになって、数年が過ぎた。
リタ・ハドソン。
裕福な商家の娘。
何不自由なく暮らしていたが、ある日、突然自立したいと思い、家を出た。
家は兄が継いでいたので、家業の方は心配いらなかったのだが、大事な娘を奉公に出すことに、父は猛反対した。
しかし、リタの意思の強さに折れた父は、民衆からも信頼のあつい、グラナート家に交渉した。
そして、リタはグラナート家に仕えることになった。
グラナート家に仕える人々はとても親切で、何も知らないリタに色々と優しく教えてくれた。
グラナート家、当主であるグラナート公爵ルーイも、ドーラロズ国王から信頼のあつい方で、民衆からも人望がある、とても出来た方だった。
ルーイの妻、アンヌも穏やかで心優しく、リタに親切にしてくれた。
その二人の嫡男であるカレルは、白金色の髪に緑の瞳を持ち、容姿端麗な子爵として有名だった。
その容姿に似合わず、誰にでも親切で、好んで冗談を言う明るい青年であったカレルは、父同様、民衆から慕われていた。
勿論、リタに対しても親切だった。
リタは家を出たことは正解だったと、この家に仕えることが出来て幸せだと、心からそう思っていた。