途切れた微笑み

□途切れた微笑み 第二話
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 フィル侯爵家のアンドリュー子息が、剣術大会を開くことになった。
 アンドリュー子息といっても、フィル侯爵が存命である今は、40代であるアンドリューも子息と呼ばれる。
 カレルはこの貴族だと言うのに、豪快で貴族らしかぬアンドリューが好きだった。
 一方、アンドリューも、カレルの貴族らしかぬ冗談好きで明るい人柄が好きで、歳の違いを乗り越え、二人の間には友情が生まれていた。
 カレルは剣術は得意ではなかったが、親友の開催する剣術大会に顔だけでも見せようと、父のルーイに許可をもらった。

 「父様、護衛と身の回りの世話をする者を何人か連れて行きますが、俺が手配してもよろしいですか?」

 「カレル自身が手配するとなると、リタは一番に選ばれるな。」

 ルーイが穏やかな笑みを浮かべて言うと、カレルも笑って、

 「そうなりますね。」

 そう言って、カレルはルーイの書斎を後にしようとする。

 「カレル。」

 そこを父ルーイが呼び止めた。

 「なんですか?父様。」

 カレルが振り返ると、

 「本気なのか?」

 カレルは、父がリタのことを言っていると瞬時にさとる。
 カレルは花が咲くように笑うと、

 「本気ですよ。」

 そう言って、部屋を後にした。
 ルーイは息子が出て行ったのを確認して、大きく息を吐く。
 今、ドーラロズ王国は平和だ。
 しかし、隣国ガフェリア王国が不穏。
 荒れに荒れていた王位継承権の問題が解決したのである。
 当初、名前すら挙がらなかったカチェリィナ王女に王位継承権が回ったのだ。
 王の遺言が公開され、今、あの国は不穏だ。
 隣国のことだ。
 このドーラロズにはなんの関係もない。
 そうは思うが、内乱が国対国の大戦に発展するとも限らない。
 新女王がこの機に乗じ、侵略するとも限らないし、何より動向が不透明過ぎる。
 どうなるかわからない今、息子の幸せを願うものの、今は時期ではないとも考える。
 もちろん、ルーイは息子が爵位のない商家の娘と結婚すると言っても、反対するつもりは全くなかったし、それは元侍女であるルーイの妻アンヌも同じだった。

 何もなければいいが。

 ルーイは机の上にある書類を一つにまとめ、大きな窓を振り返った。
 雲ひとつない晴天だった。
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