途切れた微笑み
□途切れた微笑み 第二話
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フィル邸の広い庭に設置された来賓席に通されたカレルは、リタ以外の使用人を下がらせた。
「あの、カレル様。私は何をすれば…。」
リタが聞くと、カレルはにっこり笑って、
「そう。それじゃあ…。」
「あ、はい。」
リタが意気込んで返事をすると、カレルはいたずらっ子のような笑みを浮かべ、
「ここにいてくれればいいよ。」
リタはカレルの返事に当惑する。
「あの、それでは私は…。」
リタの困りきった表情に笑いながら、カレルは続ける。
「大丈夫だよ。皆、わかっているから。」
「そういう問題では…。」
「いいから、いいから。」
笑ってカレルが言った、その時だった。
「カレル。」
その声に振り返ると、貴族の服に身を包んだ屈強な体をした中年男性がいた。
アンドリュー・フィルだ。
「アンドリュー、久しぶり。」
カレルが言うと、アンドリューは控えていた使用人を下がらせ、カレルに歩み寄った。
「久しぶりだな。どうした、その体は?剣の稽古はしているのか?」
豪快に笑いながら言ったアンドリューに、カレルは笑いながら、
「剣は苦手なんだ。」
と言って笑った。
今なら…。
リタは話し始めたカレルとアンドリューに一礼をすると、その場を離れ、エリオットたちがいる屋敷の中へと入って行った。
他の貴族たちが連れて来た使用人たちと共に、剣術大会の準備をしているエリオットを発見すると、リタは小走りでエリオットに近付いた。
「おや、リタ。どうしたんだい?」
リタに気付いたエリオットが言うと、リタは頷いて、
「エリオット様、私は何をすればいいでしょう?カレル様が側にいてくれればいいとしか言ってくれないんです。」
困りに困っていたリタは、エリオットに言った。
すると、エリオットは笑って、
「カレル様の側にいなさい。リタを使うと、私が怒られてしまうからね。」
「ですが…。」