途切れた微笑み

□途切れた微笑み 第三話
2ページ/8ページ

 ルーイは自室で、王から使わされた伝令から書状を受け取る。
 封を切ったルーイは、書状に目を通し愕然となった。
 隣国の姫、カチェリィナが、このドーラロズに来るというのだ。
 そのことを民に知らせ、民の意見を聞き、報告せよ、それが書状の内容だった。

 何もなければいいが…。

 募る不安を隠しつつ、ルーイは視線を上げ、

 「承知した。」

 と伝令に伝えると、伝令は一礼して部屋を出る。
 それと入れ違いにカレルが入って来た。
 カレルは父に向き直り、

 「王はなんと言っていましたか、父様。」
 カレルの言葉に、ルーイは大きな溜息を吐く。

 「父様?」

 「ガフェリアのカチェリィナ姫が、このドーラロズに向かっているそうだ。」

 「え?」

 カレルも、曲がりなりにも子爵だ。
 国勢はわかっている。

 「王位継承権が移行したカチェリィナ姫にも、危険が迫っているということですね…。」

 第二王位継承者であったヴェディス王子が死亡した。
 それは、このドーラロズにも衝撃を与えた。
 父の意向に沿い、カチェリィナ姫を推したヴェディスの死。
 それは暗殺に違いなかった。
 そして、王位継承権が移行したカチェリィナが、他国である、この国に逃亡。
 命を狙われているのは一目瞭然だ。

 「どうなるのでしょうか。父様。」

 カレルの乾いた声に、

 「この国か?姫か?」

 机に肘をつき、指を組んで、カレルを見る。
 父の試すような言葉に、カレルは臆することなく言った。

 「この場合、両方です。そして、ガフェリアのことも。」

 息子の壮大な答えに、ルーイは苦笑して、

 「わからない。カレル、準備しろ。民にこのことを知らせる。」

 「はい、父様。」

 カレルは一礼すると、部屋を後にした。
 カレルは使用人に命じ、民の代表者を数名グラナート邸に呼び寄せた。
 説明を受けた民は、この国を頼ってきた姫を歓迎すると口を揃えて言った。
 ルーイもその言葉に覚悟を決め、その日の内に王に報告することを決めたのだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ