途切れた微笑み
□途切れた微笑み 最終話
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リタがカレルのプロポーズを断ってからも、カレルはいつも通り明るかったが、リタのことはさりげなく避けていた。
リタ自身も顔を合わせ辛かったので、それはそれでよかったのだが、やはりカレルを深く傷つけたのだと知り、リタは胸が苦しかった。
そして、リタは戦争が終結したことを知る。
エリオットから伝えられたのだった。
エリオットの自室に呼ばれたリタが、エリオットの前で姿勢を正す。
エリオットは椅子に腰をかけ、書類に目を落としながら、口を開いた。
「リタ、戦争が終わったそうだよ。ロズドアズ王子とカチェリィナ姫の結婚が決まって、戦争が終結したらしい。騎士達の凱旋も始まる。ルーイ様とカレル様が王都に行くことになっているから、リタも一緒に行きなさい。」
エリオットの言葉に、一瞬リタが肩を震わせた。
その様子を見逃さなかったエリオットは、目を鋭くさせる。
「リタ?」
エリオットの声に、リタは怯えるように萎縮して口を開いた。
「はい。」
穏やかな表情を作り、エリオットは続ける。
「カレル様と何かあったのかい?」
ぎくりとして、リタは背筋を伸ばす。
「あ、いえ…。」
戸惑いながら言ったリタに、エリオットは苦笑して、
「隠しても無駄だよ。」
「あっ…。申し訳ありません。」
リタは俯く。
言った方がいいのだろうか?
一瞬、迷う。
でも、真実を告げれば、何か言われるだろうか?
そこまで思い、リタ下唇を噛み締める。
私はやはり間違っていたのだろうか?
公爵家の嫡男からの結婚の申し出を断るなんて…。
黙りこんだリタに、エリオットが声をかけた。
「リタ?私は何もリタを責めようとは思っていないよ。顔を上げなさい。」
「はい…。」
エリオットの労わるかのような声に、リタは顔を上げる。
リタは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
いつもは明るいリタが、最近様子がおかしいのはわかっていた。
休暇をとり、仕事に復帰してからは目に見えて憔悴していた。