怪獣

□怪獣歌合戦
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「何ィ!?レオの誕生日だとォ!?」

深海の色をした髪を持つ少年が思わず声を上げた。
「ダガーラ、知らなかったのかい?」
答えたのは背が高い割に腰の細い人物だった。
前に大きく二つに分けたエナメルのような髪、褐色の肌、彫りの深いマジョーラカラーの瞳、ふくよかな唇。
清楚でシンプルな衣裳をまとい、性別を判断するのは不可能であろう。とりあえずこの人物――――ジラは「彼」より「彼女」と言い当てることにしよう。
彼女の隣にはお馴染みのJr.や、保護者扱いであろう機龍、強制されたに違いないデスギドラの姿があった。

レオの誕生日を記念してカラオケパーティーをするのだ。
ガメラとイリスは前々から予定していた古都デートと重複して来られず、トトとゴーゴはそのお留守番兼遊んでいるとのこと。
グランドやレギオンは返答無しだったが…

当然、ダガーラはついてきた。
Jr.が道を歩いてる途中でダガーラに聞く。
「ダガーラ、割勘だけどお金ある?貸そっか?」
「うち(ピラミッド)から適当に金目のものを持ってきた。後で換金する。」
そして小声で一言。
「あのクズ四角錘が…!!」
「…そうなんだ。」
あまりに恨み辛み嫉み妬み僻み猜み憎しみが籠もっていたので、まともに返せる言葉がなかった。
「クソッ、何でこの俺があの女の誕生日祝わなきゃなんねーんだよ。俺だって誕生日なのに。しかも毒薬魔までいやがる。」
皆から少し離れて足を引き摺りながら嫌々ついてくるデスギドラが小言のように文句を垂れている。
「ん、デスギドラ誕生日なのか?じゃあこれをあげるぞ。」
振り返りざまにダガーラがどこからともなく手にしていたのは、不気味な液体を垂れ流しにしているベーレムだった。
液体は地面に滴るとコンクリートに煙を立てている。
「いらねーよ!!!」
目尻が切れるくらいの形相で、デスギドラが拒絶したのはごもっともである。
澄ました表情でダガーラは話を続ける。
「しょうがない。じゃあ記念にいい事教えてやる。地上生物のお前が、呼吸をしながら水面に頭を1日中浸けていられたら綺麗な花畑が見れるらしい。」
「喧嘩売ってんのか掃除機野郎。」
「黙れパチモン!」
真昼の猫に似た鋭利な瞳孔に、狂乱の月のような黄色いダガーラの虹彩が相乗し、こんな目で見られただけで足が竦んで殺されそうだ。
しかし負けじと鮮血の赤い瞳で睨み返すデスギドラ。
二人の目線に火花が散る。
「まーまー、落ち着いて。」
そんな二人の間を割るように、相変わらず能天気な、気の抜けた機龍の声が水を差した。
「チッ。」
「……」
デスギドラは舌打ちすると喧嘩を取り止める。
今機龍を殴ろうと思えば間抜けな事に案外あっさり拳があたるだろう。それで怒ったりはしない。
しかし「立ち戻った時」を知っているので、無意識にやめてしまった。
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