怪獣

□ラドン温泉湯煙事件・前編
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「へ〜、ラドンお前温泉で仕事してるのか。」
数刻後、ラドンに招待され、ゴジラ達は温泉宿に来ていた。Jr.はやはり被保護者なのでついてきており、もう一人はゴジラとコネがある機龍だ。
時刻は既に入浴時間を過ぎており真夜中だったが、貸し切り状態を味わえるというものだ。
ラドンが働いているだけあって、温泉はラドン湯。勿論ラドン湯のラドンは原子名である。
ラドンはいつものパラグライダーのような服装ではなく、仕事用の法被を着ている。
彼は少し誇らしげに、この温泉について説明を始めた。
「ここん温泉はホルミシス効果で、免疫細胞を活性化させるばい。効能は皮膚病、婦人病、外傷、痛風、血圧低下、循環器障害。」
「なるほど。」
ゴジラが相槌を入れた。だが、
「よく意味を知らないのに、言葉を並べるって事だな。」
「せからしか!」
嗚呼、なんて哀れなラドン。
「兄ちゃん、温泉案内して?」
「よかばってんたい!」
流石に義兄が可哀相なので、脱線した話の軌道を戻すJr.。当然、可愛い弟の為なら(本気で血の繋がった兄弟だと思っている)どんと来い、なラドンだ。
丁度その時、
「うっ…!?」
ゴジラが唸り声…呻き声と言った方がいいだろうか、何かまずいものでも見たかのように顔を引きつらせた。
その目線の先には、モスラとバトラがいたのだ。
「あら、ゴジラじゃない!」
相変わらず柔和な笑みを湛えるモスラ。ゴジラの方に気が付いたらしい。
モスラ…怪獣王と謳われるゴジラがピカ一苦手とする守護神。そのくせバトラとタッグを組み、一対一ではなく二対一でゴジラを海に突き落としても、微塵も卑怯さを感じさせない絶対的な存在。
しかし何より、ゴジラは彼女の優しさが恐かった。
「バトラにモスラさん。」
「こんにちは。」
そんなゴジラの心境など露程にも知らない機龍とJr.は、嬉しそうに彼らに話し掛けてある。
「こんにちは。いつもうちの子がお世話になってます。」
別に彼女は腹が黒いというわけではない。ひがみ切ったゴジラにとって、眩しいものはよほど攻撃力が高いのだ。
「おいラドン…」
「ん?」
「何でモスラがいるんだよ…」
「招待しちゃわからんかったか?」
「悪いに決まってんだろ!?首の骨へし折ってやろうかトリ頭ァアアア!?」
「ばっ、ギブギブ!!」
ゴジラがラドンの首を片腕で引っ掛けて、もう片方の腕で圧迫する。
「あ…ゴジラゴジラ、駄目だよ首なんか絞めちゃ。」
機龍が説得力のない声音で制止しようとするが、如何なものだろうか。
「ん、娘はどうした?」
ふと、その事に気が付いたゴジラは、モスラとバトラに問いた。それでやっとこさラドンは解放される。
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