怪獣

□PoPo Looise
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俺は同胞との戦いを強いられた。
叫びを堪え、涙を出せず。
こんな事をしたくないというのに、心は鋼に、両手は剣に。
現に同胞と戦っていても顔色一つ変えはしなかった。

「機龍…」

俺は機龍隊の整備士・中條義人一曹の前に居た。
銀の機体に覆われてからの4年、彼らは俺を機龍と呼ぶ。義人は機龍の面倒を見てきた。

「俺はお前の事、何も判ってなかったんだな…」

俺は人間が憎い。
核を落とし島を奪い、自らの都合で俺を殺した。更にこうして俺の骨から戦いの道具を造り上げた。
でも、義人は人間の都合で機龍を廃棄する事をよしとしなかった。

「お前は、眠りたかったんだな…」

…そうだ。
俺はもう戦いたくない。
急に悲しみが込み上げる。
義人は俺に、応えた。

「ごめんな、機龍…」

義人…俺の為に、泣いているのか?




『PoPo Loouise』




2004年の春、機龍はゴジラと共に日本海溝へ沈んだ。
機龍の帰還は、ない。
機龍無き特生自衛隊機龍隊は、その名だけ残して現在も活動をしている。
あれからゴジラは現れてはいない。
『あいつがゴジラを呼んでいたのは、やっぱり本当だったのかな。』
この休暇を利用して中條義人は東京湾から海を見ている。初めて現れたゴジラが葬られた場所だ。
釣り糸を垂らしているが、それはただのカモフラージュのようなものだった。
その針に魚がかかる事はない。何故なら真直ぐな針だからだ。
『ゴジラは機龍を海に還す為に来たのか?』
「ゴジラ」。ふと、義人はその固有名詞に違和感を覚える。
『「ゴジラ」か…機龍だってゴジラなんだよな。』
2004年の夜間戦、機龍の機内に閉じ込められた義人は激しい揺れによる衝撃で気を失った。
その時見たのだ。機龍の記憶と想いを。
核を被り怒りを顕に東京を火の海にした事、オキシジェン・デストロイヤーで引導を渡された事、機龍として戦いの道具にされた事、八景島での共鳴と暴走。そして、家城茜の存在。
『何もいい事がなかったかもしれない。なのに、お前は…』

SAYONARA
YOSHITO

『俺を助けてくれた。』
二進数のデータの塊に、心や意志がどう関係するんだと人は言う。更に仇であるはずの人間を助けたのだ。

「中條君。」

不意の呼び掛けに、義人は我に返った。声のした方を見ると、見覚えのある女性が立っている。
「家城二尉…」
家城茜。品川の戦いで、機龍に乗り込みゴジラと引き分けた機龍隊員だ。
「茜でいいわ。今は勤務中じゃないもの。」
そう言うと、彼女はにこりと微笑んだ。
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