怪獣

□命の別名
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“今思えば、十月のあの時、既にカウントダウンは始まっていたのかもしれない。”




『命の別名』




十月。旧暦では神無月と呼ばれる。その所以は日本全土の神々が出雲の国に集まるからだ。そして、出雲の国では神在月と呼ばれる。
護国聖獣も出雲の地に来ている。勿論遊びに来てるわけではない。
だというのに…
ゴジラが墓地にあった供え物をモグモグ食べている。
「ゴジラ、供え物勝手に食べるんじゃない!」
「何だよ、何で自分の墓の供え物食べちゃダメなんだよ!?」
「…それもそうだな。」
そう、彼は犠牲者や英霊の残留思念。ある年代の墓は大抵彼の中の残留思念の墓だ。
彼に故郷はない。しかし彼の中の記憶の故郷は、彼の故郷とも言えるだろう。
出雲大社に迎う道には大きな鳥居があり、2つ目のそれがある場所から出雲大社の境内になる。
「錦のおっ味噌を知っらないか♪」
「ゴジラ、それ山陰の人にしか分かんないよ。」
出雲大社の参道は全国的に珍しい下り坂になっていて、モスラ、ゴジラ、ギドラ、バラゴンは、その手前の鳥居がある丘「勢溜まり」に着いたところだ。
「バランさんは先に来てるって。」
バラゴンはバラン同様、東北出身なので彼の連絡係になってくれている。
しかし、問題は彼女の隣の欠伸をしている金髪だ。
「ふあ〜」
「ギドラ、寝呆けるな!」
彼…ギドラが寝坊した上二度寝したものだから、モスラの予定より1時間も遅れてしまった。
「皆、」
モスラが荒んだ目付きをしていたところ、三度笠を被った男が歩み寄ってきた。バランだ。
「遅かったな。」
彼に気付いてバラゴンがバランに会釈する。
「あ、御無沙汰してます!」
モスラも黙ったまま会釈をするが、彼が面を上げると隣のゴジラがいない。更にさっき迄寝呆けていたギドラもいない。
あの万年マイペース男が二人も余所でうろつかれたらとんでもない事になる。
周囲を見渡すと、境内から抜けて、商店の立ち並ぶ神門通りをうろついていたのだ。
「たわらまんじゅう食ーべるー?」
「いいじゃん。」
「出雲蕎麦とデラウエアもあるぞ!」
ゴジラとギドラはまるで観光気分だ。
それを見ていたバランとモスラの顔が、瞬く間に無表情となる。一歩、二歩と速度を上げながら彼らに近付く。歩行が走行になった。そして、
「遊びに来てるんじゃない!!」
バランとモスラが同音で怒鳴り、一瞬、宙を滑空するとそのままドロップキックをゴジラとギドラにかます。
「どわっ!?」
二人は100m以上離れた、神門通りを抜けてすぐの、一つ目の鳥居がある堀川に轟沈させられてしまった。
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