怪獣

□BORN
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『身体が…動かない。』
私は中生代白亜期に行ってキングギドラを倒した。
でも、代償に翼はボロボロに焼けてしまった。
もう飛べない。
飛べなくなったら私達は死んでしまう。
そうでなくとも、私の指先さえピクリとも動かなくなってしまっている。

――空から恐怖の大魔王が降ってくる。

それが何故顔も知らぬ父の言葉だと分かったのだろう。
またキングギドラが現れる。
『お父さん…』

私は、繭の中に居る。






『BORN』






「ダガーラ。」
若い女性の声。
「貴方のお陰で、海がこんなに綺麗になりましたよ。」
海が見える。暖かい色の赤い夕日が海を形容しがたい程に美しい景色にしていた。
エキゾチックなピラミッドの頂上から見ると圧巻だ。
夕日を見ていたのは、白いベールを被った、先程の声の主であろう女性。そして隣には、中米の古代文明の雨神トラロックと言っただろうか、そんな衣裳を身に纏った青年。
「ありがとう、ダガーラ。」
ダガーラと呼ばれた青年は彼女に微笑まれると、嬉しそうに見えた。
私はこの青年を知っている。
ニライカナイの水質汚染対策として造られたダガーラ。当然、人間の為に生まれたのだから、人間に喜ばれて嬉しくないはずがないだろう。
「……」
誰かの幸せは、私にも力を分けてくれるようだ。つられて私も頬が弛む。
「……」
でも…
ダガーラは…

「何だ、これ?」
水面におびただしい程の量のオニヒトデに似た毒々しい怪物。海洋生物が浮いている。その死骸は強い酸にでも被ったように部分部分溶けていた。
「駄目だな…ダガーラの奴毒吐いちまってる。」
「欠陥品か。」
「処分するしかないだろ。」
彼は自己嫌悪と恐怖で顔から血の気が引いていた。その場から離れるように、ひとつ、またひとつと後退する。
「嫌だ!!」
彼が悲しんでいる。
「棄てないで!!」
彼が苦しんでいる。
「ちゃんと、ちゃんと海を綺麗にするから…!!」
彼が寂しんでいる。
「誰でもいい…誰か、誰か助けて!!」
彼が、助けを求めている。
「ダガーラ!!」
私は手を伸ばした。助けなきゃいけない…違う、助けたい。
この手を取って、ダガーラ。

スッ…

「!」
しかし、まるで立体映像のように擦り抜けてしまった。
『私は…』
歴史を見ているだけなの?
『でも…』
私はこの歴史に繭の中に居る。
…なんと歯痒い事だろう。
ベーレムは赤く海面を染めていた。あの夕日と同じ赤なのに、それはあまりにも残酷な。
これからどうなるかは、ダガーラと戦った時に聞いている。
ニライカナイが滅ぶ一因となり、彼がこの文明に報復する前に地震で滅んでしまったと。
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