怪獣

□マリンスノウ
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夏も終わりを告げ、大分日も短くなってきた。
それでも蜩や油蝉が空気を揺らすように鳴き続け、爛々とした太陽がコンクリートの坂道に陽炎を作り出す。
近くに高い建物はない。海に近い田舎といったところか。
その道から1つの人影が覗いた。どうやら少年のようだ。
小麦色にこんがりと焼けた肌に深海のような花浅葱色の髪が似合う。顔まで影に隠れる大きさの麦藁帽子、どこで買ったのか、シーサーの印刷がある白のTシャツにジーンズ生地のハーフパンツ、足にはサンダル。背中には、大きなサックに火鋏がぶら下げてあった。
「…見えた。」
彼―――ダガーラは小さく呟いた。
カナリヤ色で切れ長の目に、ターコイスブルーの揺らぎが映る。
海岸沿いのこざっぱりとした道路を渡り、海の手前にある柵から砂浜を見下ろして、また顔を上げる。
水平線より下には蒼溟、上には蒼穹。
ふと、一陣の風に髪が靡く。
「ダガーラー!」
澄んだ声が潮風と共に聞こえてきた。声がした方に目を向けると、広い白浜に軽装の少女が手を振っている。
「レオ…」
彼は足を急がせた。人一人が通れるだけの余裕しかないコンクリートの階段で浜辺に下りると、サンダルからサラサラとした砂独特の感覚が伝わってきた。
「ダガーラ2番〜!それよりいつもと恰好が違うから、少し分からなかったよ。」
レオも彼同様、荷物を所有している。ゴミ袋だ。
「レオは早いんだな。集合時間迄15分もあるぞ。」
あまり感情に起伏のない声で彼女に目をやる。彼女は駆け足で彼に近付いた。
「まーね、海岸の清掃活動企画したの私だから。」
そう、海岸清掃ボランティアを考案したのはレオである。そしてそれに誘ってくれた事が、ダガーラには嬉しかった。
海のように透き通った瞳、虹のように澄んだ蒼い髪。
そんな彼女と二人きりの状況に思わず、はにかんでしまう。
このまま、時間が止まってしまえばいい。頭にそう過った。
その時、
「レオ姉ちゃーん!!」
長い砂浜の向こうから子供の声がした。
「!?」
まさか、自分一人じゃないのか?
目を疑い、思い出したように隣のレオに目を向ける。
彼女は手を振っていた。
再び目を疑い、ダガーラは声にならないくらい動揺する。しかし、感情があまり顔に出ないので、黙止しているようにしか見えないのだが。
現われたのは2人。先程の声の主であろう亜麻色の髪にエメラルド色の虹彩をした10歳くらいの少年。そして、レオと同い年かそれ以上と思われる黒髪赤眼の少年。
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