堕落を望んだ神の子供

□第三章ー白い刃、黒い刃ー
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「ん?今日は犬っころいねえな。」
道端でぱったり会った元・<犬夜叉一行>…改め<ち〜む俺様!>ないし<奇天烈隊>と鋼牙。
いつも通りかごめの手を握ったまでは良かったが、犬夜叉のスペクタポーな邪魔が入らない。
ふん、やっとあの頑固一徹野郎も、
「かごめを任せた…」
とか何とか思ったんじゃないのか?
ふっ、漸くどっちがかごめに相応しいか、知能の低いヤツにも分かるようになったみたいだ。
だが、少し気掛かりだ。まあ決してあの犬夜叉を心配してるわけではない。
かごめは、奈落やその他以外の、全てに優しい人間だから、
「犬夜叉が変な男に連れてかれたの!」
と、とても心配している様子だった。
それにしてもかごめじゃなくて犬夜叉を連れていくとは。
鋼牙の中で、変な男=変態と勘違いしていた。
すぐ近くにも、弥勒という名の色情狂もいるのだが…
「半妖だから、一緒にいられないみたいな事言ってたよ…」
退治屋の娘・珊瑚が俯き加減で言った。
半妖だから?
妖怪の俺に弱点で絶対見せない筈の人間の姿…妖力が消えた日の姿を晒した犬夜叉が、今更そんな事でかごめ達から離れるなんて思わなかった。
というか、人間の姿で堂々と俺の前に現れたくらいだから、半妖だということや、その他に悩みなんて皆無で…あいつは、そんな事気にしてないとばかり…
「そういえば犬っころ、半妖だったな。でも、あいつにそんな可愛らしい神経があるとは…」
かごめは俺の手を握ったまま(?)、
「鋼牙君、犬夜叉捜すの手伝って!」
と言った。正直、あのバカを捜すのはいやだったが、寛容なかごめは、小心者の犬夜叉まで心配して…
「心配すんなかごめ、この俺があいつをぶちのめして、首筋掴んで引きずってでも連れ戻してやる!」
…キマった。
するとかごめは満面の笑みを浮かべた。
「あ、ありがとう。」
だが、当の本人は、そこまでしないで欲しいと思いつつ、苦笑いをしていたのだが…


灰色の雲が天を覆い、しとしとと雨を降らせていた。
遺体の埋められてない墓が、村にある。粗末な墓だが、白い夾竹桃の花がいつも添えられていた。
「焔…」
20歳位の女性が墓の前で呟いた。
少し長めの前髪を真ん中で分け、後ろ髪を下で結っている。
「焔…聞こえる?お花ね、食べてもいいよ。」
彼女が梓だった。焔の精神伝達が分かる、村唯一の人間。彼女は哀しげに笑う。
だが、堪え切れずに一粒の涙が落ちた。
「何で…焔は殺されなきゃいけなかったの…!!」
彼女は声を震わせた。
雨が彼女の頬を伝う。
空も泣いていた。
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