堕落を望んだ神の子供

□第四章ー全てが敵になったとしてもー
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僕の母は人間だった。彼女は饕餮の生け贄として、娶られた。
母の目は、他の虫けらと違って孤高で、綺麗だった。

「…顎門、もっと自分に自信を持って?綺麗じゃない、赤い目なんて。」

僕を、好きで生んだ訳じゃないくせに。
僕を、好きで生んだ訳じゃない位、僕は知ってる。

「私は、顎門のお母さんになれて本当に良かった。」

最期に母はそう言った。
母は、虫けらの人間なのに。
虫けらと呼ぶには勿体ない存在だった。
どんなに他の虫けらに馬鹿にされようと、侮蔑されようと、母の瞳から綺麗な光は消えなかった。
誇り高かった。

僕は、母の、あの光が大好きだった―――――





「きゃ――――――!?」
森から絶叫が谺する。
「ななな、何このミミズー!」
叫んでいたのは綺麗な黒髪を持った少女だった。
彼女の足元で30pはあろうかという蚯蚓がのたうち回っている。
避けてる所為か足取りが覚束ない。
「かごめ、犬っころはこの近くだ。」
かごめ達は、不自然に伐採された竹藪にいた。
薙ぎ倒された竹と、雑草が削げて地面が露になっている。
「犬夜叉…」
微かに犬夜叉の妖気を感じる。所々強くなったり、弱くなったりと、まちまちだ。
変化したの?犬夜叉…?
「鋼牙君、ここから先は?」
「駄目だ。犬っころの臭いが途切れてやがる。」
途切れたという事は、結界か何かをしたんだろう。やっとここまできたのに。
私は犬夜叉に信用されてないのかな。
信頼されてないのかな。
私じゃ、犬夜叉の支えにならないの?
あいつは、私達の仲間でいたかったのに。
こんな時にだけ、自分より私達の事を思いやる。
「…犬夜叉の、バカ…」
本当はどうしたいのよ。
一緒にいたいのは私だって同じ。
犬夜叉の、支えでありたい。
「かごめちゃん、大丈夫だよ。犬夜叉を必ず連れ戻す。」
珊瑚がかごめを励ます。
でも、所詮はその場凌ぎという事を珊瑚は分かっていた。だって犬夜叉は意固地だから。
「ったく、あの馬鹿。かごめ様に心配ばっかさせやがって。」
弥勒がぼやく。彼は思わず本性を出した。
鋼牙は弥勒のその様子を見て、目を大きくし、信じられないような面持ちで、少したじろぐ。
「犬っころの奴…大変だったんだな…」
「うむ…」
七宝と鋼牙は密かに話し合った。今回はその所為で犬夜叉が脱退した訳じゃないのだが…


「かごめ…」
かごめ達から大分距離を置いた所に件の少年――犬夜叉が様子を見ていた。
正直捜してくれたのは嬉しかったが、彼女の為に、会う事を辞めた。いや、真実は自分の為だろう。
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