堕落を望んだ神の子供

□第五章ー戦国の瀧夜叉姫ー
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「おっ、あっちゃんお帰り〜♪」
いつもの軽々しい声がする。その男は、変な歌を鼻歌混じりに歌っていた。
「ハゲ山に〜毛が生え〜る〜♪」
「お黙り。万年粗忽者。」
茜は無表情で突っ込んだ。
「ごめん、ごめん。ところで今日はどうしたの?妖退治出来なかった?」
軽そうなその男は、茜のいつもより沈んだ雰囲気を読み取った。余程付き合いが長いのだろう。
「ああ…敵に情けを掛けられてしまった。」
そういって茜は咎狩からおりた。
彼女と男は、拝堂の中にいる。格子の隙間から日の光が見える。
「…化物のくせに…」
茜は顔を歪ませた。殺すべき敵に情けを掛け、命だけは助けてやろうなどと。
「…私、…妖怪嫌いだ。人間も嫌いだ。半妖は…」
茜は一度口を紡ぐ。そして、「一番嫌いだ。」
微かに咎狩が目を茜に向けた。茜は、黙って呪具の整頓を始める。
「…分かってる。」
男はふざけるのを止め、静に話を聞いた。
「芹よ、今日はその半妖二人と闘って…惨敗だった。」
茜は歯を噛み締めて、男…芹に言う。
「あっちゃんが自白するなんて珍し〜。また勝負つけるんだよね?」
と、
「煩いハゲ!!」
「ええ!?俺まだハゲじゃねえよ!?」
…まだって…いつかはハゲるんだな?
「咎狩、今日はお疲れさま。ありがとうな。」
茜が会釈をすると、咎狩は軽く微笑んだ。
魂がないのは、分かっている。それでも、彼は私の仲間だ。身体の一部のようなものだ。
咎狩は、半妖なのに。
いつか動かなくなるかもしれない。狂うかもしれない。
それでも、この子が、どうしようもなくいとおしい。

―――――半妖なのに…




 
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