堕落を望んだ神の子供

□EPILOGUEー優しい両手ー
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「勝負…あったみたいですね。」
顎門は細い足並みで茜の前に立ち、焔を担ぎ上げる。
「貴方は自身を否定していた…無理に強いると崩壊する。それだけの事。」
顎門は一つ瞬きをして、魔眼覚醒を解いた。彼の深い黒の瞳は、相変わらず無感情のまま茜を見下ろす。
「私が好きだったのは人斬り血雨じゃない…人間の咎狩…」
さっきまで人肌の温かさをした咎狩の手を握っていた茜は、膝の上で拳を固めた。
「茜…」
犬夜叉は鉄砕牙を納め、彼女の方へ向かう。
「どうして…咎狩が謝んのよ…!」
彼女の握りこぶしに、雫が点々と落ちる。
「お前…何でこんな事したんだ。」
「敵に、言えというのか?」
キッと睨み付け、涙を溜めたその目は、怒りの激情を宿していた。
「お前、自分がなにしたか分かって…!」
「…そうか。」
そう答えたのは顎門。
「お前。」
「これ以上の詮索は、野暮ですよ。それに今、彼女とは無関係です。」
犬夜叉は不満着々な顔をしていたが、結局茜を背に回した。

「…無責任…」
茜が微かに小さく呟く。
『――咎狩…貴方は泣かないの…?』
やっぱり、私には貴方を虐殺者として肯定出来ない。憎めない。
貴方は、悲しい程優し過ぎるから。
「待って犬夜叉。」
犬夜叉は振り向く。茜が、半妖ではなく彼の名を呼んだのだった。
「貴方は、どうして生きていられるの?」
率直で唐突な、問い。
「愚問だな。」
犬夜叉は、頬の出血を親指ですくい、名を呼んだ為か少し笑みを含みながら答えた。

「こんな自分でも、生きてもいいって…認めてくれたから。」

そういって、隣にいるかごめの肩に手を置いた。
「……」
結界の外に向かう彼らを、茜は追わなかった。
いや、追えなかった。



「…何してんだ…お前ら…」
結界から出た犬夜叉達は、愕然とした。
弥勒達が、トランプで芹と意気投合していたからだ。
「わあっ、法師さん強いな!」
恐らく芹が負けたのだろう、弥勒を尊敬の眼差しで見る。
「はっはっはっ。」
弥勒は弥勒で相変わらずの棒読みな笑い方をしているが、
「どうせイカサマだろ。」
珊瑚に鋭く指摘された。
「……」
犬夜叉が、拳を固める。

刹那。

「ばっきゃろー!!」
犬夜叉は弥勒を宙に浮く程殴り飛ばすとそのままダッシュしてしまった。
「何で俺だけ!?」
弥勒は綺麗に手跡の残った顔を押さえながら、内心を顕にする。
「…負けちゃった…」
芹は何かしらの感情を覆い隠しながら小さく言うと、重い腰を上げる。
「楽しかったよ南蛮歌留多、ありがとう。また一緒に遊ぼうな!」
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