短編・詩

□御神籤
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年を新たに今日この頃。
楓の村の神社で、かごめと珊瑚は巫女の手伝いをしている。
「明けましておめでとうございます!はい、御神籤をどうぞ。」
結構な人気で、村中の人々が列を作っている。この村にこんなに人がいたのかと思うくらいだ。
その列は鳥居を抜けて階段の下まで続いていた。
「ああ、美しい…」
巫女装束の、かごめと珊瑚がいる場所よりある程度距離を取った所から、弥勒が呟く。
彼の足元にいるのは、七宝と雲母だ。七宝はかごめから貰ったマフラーを巻いている。
「かごめと珊瑚から御神籤貰いたいのう…じゃが、あんなに行列があるし…」

「ったく、馬鹿かてめえら。」

その時、犬夜叉が水を挟んできたのだ。
「正月だか知らねえけどよ、都合のいい時だけ信じやがって。拝んでも願い事なんて叶えてもらえねえじゃねえか。」
何を彼が願ったかはどうせろくでもない事だろうが、その言葉に、弥勒はどうしても許せなかった。

「って、そういうてめえは並んでんじゃねえか!?」

坊主なのに、ツッコむところが違う。
「や、やかましい!還暦2回経験した俺の気持ちが分かるか!」
「分かんねーよ!!」
だが、何かを思い出したのか、弾けるようにその場を起つ。
「どうしたんじゃ弥勒?」
「さっさと並んで、珊瑚から御神籤を貰うんだ!」
こうしてはいられないとばかりに、弥勒は走って階段を駈け下りた。七宝と雲母もそれに続く。
行列に並ぶ為に。

かごめから御神籤が欲しいばっかりに、さっさと行列に並んでいた犬夜叉。目の前の村人も減ってきた。
『あと2人…!あと1人…!』
無意識のうちに拳を握り、内心カウントダウンを始めている。それを後ろのもうろくしかけた老人が不思議そうに見ていた。そして、
『俺の番だ!』
さりげなく彼女達の前に出た。
「明けましてお…犬夜叉!?」
それに驚いたのは、かごめだ。隣の珊瑚は多少驚きはしたが、寧ろ呆れている。
「なんであんたがいるのよ!」
「え〜っと、あれだ、人込みに流されたんだ。」
犬夜叉とかごめの夫婦漫才を見ながら、もう少しマシな嘘をつけよ、と珊瑚は思うのだった。
雑な言い訳にかごめは溜め息を吐いたが、フッと微笑む。
「犬夜叉の分はこれとは別に用意してあるわ。信憑性は薄いけどね。」
そう言うと、かごめは懐から御神籤を取り出した。
「かごめ…」
「ほら、貰って!」
犬夜叉に、かごめはそれを手渡す。
「……」
「これはかごめちゃんの手作りなの。犬夜叉、貰っていきなよ。」
犬夜叉は恥ずかしそうに黙っていたが、珊瑚がニコニコしながら催促した。
「ま、まあ、貰えるもんなら貰っとくぜ。」
そっぽを向いてひねくれた事を言う犬夜叉。彼の癖だ。
「照れてる。」
「ねえよ!」
かごめが言うと、空威張りして足早に去っていった。
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