怪獣

□ラドン温泉湯煙事件・前編
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娘とは言わずもがなレオの事だ。
「レオったら、夫婦水入らずで休んできてって言ったのよ。」
そう言うと、モスラの頬はポッと赤くなる。バカップルだな、とゴジラは半ば呆れた。
「ハズいだろ!」
突然、ゴジラはバトラに殴られる。
「痛えよ!!」

彼らがこんなショートコントをしている間、モスラとバトラの娘・レオは、ダガーラとゴーゴの家(遺跡?)で婆抜きや爺抜き、神経衰弱、大富豪に七並べ、ダウト、ウノ等をしていた。

場所は戻ってラドン湯温泉旅館。
なんやかんやでもめていると、出入口の自動ドアが開く音がした。
そこから入ってきたのは、一人の青年と少女だ。
少女はまだ幼さの残る顔立ちでショートカット。目付きは円らだがどこか鋭い。女学生の夏服にも見えるがそれは衣で、半透明の錦の羽衣を2対の翼のように纏っていた。
青年は青緑を帯びた玄武岩のような色の髪をしており、その目もやはり同系色で緑色をしている。装いは異国情緒溢れるものだ。
「ガメラ…」
その名を、ゴジラは口にした。
モスラの時とは違う、憎悪と否定の激情がその一言に凝縮していた。
理由は簡単、ガメラが人間の味方だからだ。ゴジラが唯一守りたかったものを奪い取った人間の、味方。
「…ゴジラ。」
彼に目線を合わせるガメラ。せめて、真っ向から向き合おうという彼の意志。
はからずも目線と目線は雷のようにバリバリと中央で拮抗する。マッチか蝋燭を間に入れたら引火しそうだ。
「な、何か空気がわっか…」
こういう風に空気が険悪な状況を修羅場≠ニ言ったっけ、とラドンは内心思い出す。
怪獣王と、空飛ぶ亀。雌雄を決する時が今なら死闘は必至だという事は、火を見るよりも明らかだ。
「父さん、喧嘩しちゃ駄目だよ!」
ゴジラにとって恐らく唯一のストッパー・Jr.が、一触即発を抑えようとする。
「…それなら、丁度ここに卓球場がある。風呂上がったらここに来い。」
ゴジラはそう言うと、ガメラに背を向けた。一見して全くの無防備、隙だらけだが、殺気が針鼠のように突き出している。
「……」
ガメラの碧い目は、それを見ていた。
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