堕落を望んだ神の子供

□第一章ー神の子の顎門ー
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青年は天空を見ると、
「今日は朔か…。捕まえ易くなったな。」
青年はくすりと笑うと、姿をかすませた。

夜も大分更けてきた。側で眠っている犬夜叉を見ながら、かごめは考えていた。
いつまで彼といられるだろうか。
四魂の玉が完成してしまったら、犬夜叉はどちらを選ぶだろう。
人間か、それとも妖怪か…
『俺は妖怪になる。そう決めたんだ。余計な口をはさむんじゃねえ。』
以前、確かに彼はそう答えた。
だが、妖怪になったら、犬夜叉は犬夜叉でいられなくなる。あの時も、人を殺して笑っていた。私の事も忘れていた。
「私の声…、いつまで届く事が出来るのかな…」
私は優しい彼が好きだ。今のままの彼が…
何処か遠くに、彼の心がいってしまいそうで、悲しかった。
かごめは犬夜叉の黒髪を撫でる。
「犬夜叉…、私は半妖のままの犬夜叉が好き。だから、…居場所はここにあるわ…。力ずくで妖怪にならなくても大丈夫だから…。独りで闘わないで欲しい…」
辛い時、悲しい時は泣いたっていいから。
一度でもいいから。独りでなんか生きないで、私の手をとって欲しい。
例え、どんなに彼が化物と言われようと、変わり果ててしまっても…
私は、犬夜叉の味方だから。
「…!」
ふと、大きな妖気を感じた。獣のような曲々しい妖気。
妖気から察するに、かなり強力な妖怪だ。犬夜叉は風邪だし、私がやるしかない。
ここは私の破魔矢で―――「んぐ!?」
いきなり口を抑えつけられた。誰?全く気配を感じなかった。
「分かるか?すげえ妖気だ。」聞き慣れた声がした。
口を抑えていた声の主は、犬夜叉だった。大きな瞳を見開いている。熱も大分下がったようだ。
それにしてもいつの間に起きたのだろう。
まさか、始めから起きて…あの恥ずかしい話も聞かれたんじゃ…!?
今にも「おすわり」と言いたかったが、そんな場合じゃない。
気を張り詰める。と、
「下がれ!」
犬夜叉が叫ぶと同時にフワッと浮かんだ感覚を感じる。犬夜叉はかごめを担いで2、3m程跳躍して後退した。
そして、
堂の扉が、砂になって消えた。
「!!」
扉の向こうから高い人影が見えた。
「へえ、僕の妖気に当たっても動けるんだ。さて、どっちかな?」
男が立っていた。かごめより30p程高いだろう。
ショートカットの黒髪に、静かに閉ざされた眼。
人間の姿こそしてはいたが、ありえないような妖気を発していた。
眼を閉じているのに、男はかごめと犬夜叉の瞳を覗き込むような仕草をする。
すると男は嬉しそうに言った。
「君は…半妖だね?僕の仲間だ。」
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