堕落を望んだ神の子供

□第五章ー戦国の瀧夜叉姫ー
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今日は梓の家で宿泊する事になった。
「やっと一日か…」
か細い月が出ている。
かごめ達から脱退し、顎門と同行してもうすぐ一日経つ。長かった。
そういえば昨日から一睡もしてないな。
「…ねむ…」
しかも今日は戦闘、変化の抑制、私刑で、完全に体中が軋んでしまっている。
「仲間…か…」
犬夜叉は仲間の寝顔を見て、無邪気に微笑んだ。
「よくいうぜ、バカ。」
半妖の俺と、対等に向き合ってくれる仲間。今までにない不快じゃない感覚だ。
「俺こーゆうの趣味じゃねえんだよ…」
殴られて暫く鈍痛がする頭を擦る。
何となく、格子の間から夜空を見つけた。
銀河の千尋なる鮮やかな星々。何処までも続く、抜けるような黒い夜空。
そういえばゆっくり星を見るのも久方ぶりだ。
…いや、そうでもないかもしれない。

星には寿命があって、死ぬ時は光が消える。昔はよくそれを見つけたものだから、眺めるのが憂欝になった。まるで自分が消えるみたいで。似たような星の中、誰にも知られる事もなく、塵と化す。そして俺は、誰からも必要とされず、死ぬだろう。

たった一人で。

いつも一人で。

馬鹿馬鹿しい。俺が一体何をした?何でいつも拒絶する?好きでこんな世界に生まれたわけじゃないのに。
「…ん…?」
いつも見なかった星を見つけた。新しい星が生まれたのか。
新しい星は周りの星に囲まれて光っている。
「……」
暫くそれに着目する。
「お母さんは…星になったんだよ…」
誰も突っ込まない。衣の間から入り込む夜風が寒い。
「一回、言ってみたかっただけだよ。」
誰も居ないのに、独り言を続ける犬夜叉。ある意味異常だ。
独りじゃないんだよな。
犬夜叉は胸を下ろした。
「弥勒の野郎〜頭いてぇ…」
急に眠気がのしかかった。
「ん゙?」
墓石の前に何か立っている。保護色でよく見えない。時折、透き通った白いのが揺れている。だが、犬夜叉には分かった。
「なんだよ顎門?」
墓前にいたのは顎門だった。闇に溶け込んでしまう漆黒の衣服に、それによって冴える白く淡色の肌。勿論瞳は閉じている。
「犬夜叉…体もういいの?」
顎門は、犬夜叉に問いた。
「けっ、俺を誰だと思ってやがる。」
それを聞いて、顎門はまたクスリと笑う。

それが何故か癪に障った。
「てめえ、何企んでやがる?」
強い口調で顎門を問い詰める。顎門の笑顔があっさり消えた。
「へえ…ばれた?」
顎門は身体をこちらに向ける。
「人間を散々虚仮にしてきたてめえが、人間のかごめ達に愛想良くするなんて変過ぎるからな。」
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