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□童話シリーズ『赤ずきん』
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森の奥に、お母さんとそのこども二人だけで住んでいるおうちがありました。
二人はとても仲がよくて、小さなおうちからは、あたたかい香りと笑い声がたえることはありません。
幸せなおうちでした。


「かずみ」

ある日、お母さんがこどもを呼びました。

「なぁに、お母さん」
「おばあちゃんが、ご病気になってしまってね。おみまいに、このパンとブドウ酒を届けてほしいの」
「うん!」

かずみは元気に答えました。
お母さんは、少しかずみに待っているように言うと、何かたんすを探しだしました。
やがて、真っ赤なずきんを持って戻ってきました。

「お母さん、それはなに?」
「おおかみよけのずきんよ。おおかみは、赤いものを見ると火とかんちがいしてこわがるからね」
「おおかみ?」

かずみはまだ小さくて、あまりおうちから離れたことがなかったので、おおかみを知りませんでした。

「おまえをぺろりと食べてしまう怖いものよ。会ったら、かならず逃げなさい」
「うん、わかった!」
「じゃあおいき」

「いってきます!」

かずみはお母さんに元気よく手をふると、わくわくしながら歩きだしました。
それもそのはず。
一人でおうちをこんなに離れるのは、はじめてだったのですから。
おばあちゃんのおうちには何度もいって、道もしっかり覚えています。

「嬉しいなぁ」

かずみはにっこり笑いました。





てくてく歩いていると、ひときわ大きくてきれいなお花がたくさん咲いているお花畑を見つけました。

「うわぁ、きれい!」

きれいなものが大好きなかずみは思わずかけよろうとしましたが、

「かずみ、よりみちはだめよ」

とお母さんに言われたのを思い出して、残念だと思いながらまた歩き始めました。
それからずっと歩きつづけて、しばらくすると、湖がありました。
さすがに元気なかずみもつかれていたので、そこですこし休むことにしました。



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