DEATHNOTE
□愛玩動物のススメ
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夜神月が一体何を考えているのか、いまいち確信しきれない。
恐らく、本人の中でも自分が私をどうしたいのか、まとめきれていないんだろう。
そんな不安定な状態だから、思ったより早くこの生活を終えられそうだ、と。
隙をつき、もしかしたら一気に事件の幕を下ろせるかもしれない、と。
最初は考えていた。
だから逃げる必要も感じなかった。
すぐ、終わるのだから。
「夜の、そうだな、7時頃には帰ってくるから」
「そうですか」
「うん、それじゃあ」
パタン、と軽い音と共に彼の姿が視界から消える。
今はまだようやく9時をまわったところだ。
ならば、今日はあと10時間私は一人でいることになる。
(最近…外出時間が長くなった)
始めこそ最低限の外出(食材、調理器具の買い出し程度)しかしていなかったのが、この頃は何をしているのか、朝から出掛け、夜に帰宅する。
おかげで彼のいる時間帯でしか食事が出来ないが、思ったより苦ではない。
それだけ、私はこの生活において思考していないということだ。
というより、本人を前にしなくては、いくら一人よがりに思考を巡らせようと意味はないことに気付いただけなのだが。
とにかく私は、この長い時間を思考以外で埋めなければならなくなった。
今までは彼の買ってきた本で時間が潰せたが、彼の調理中にも読んでいたせいで昨日全て読破してしまった。
だから今日は、今日をどうするか考えるのに費やさねばならない。
その行為が何故かかなりの苦痛を伴うことも、この生活で学んだことの一つだった。
(はやく帰ってくればいいのに…)
まったく、さすがキラであるだけ、自分勝手な男だ。
なぁん
「…?」
身を起こして窓を見遣ると、いつからいたのか、猫がこちらをじっと窺っていた。
珍しくもない黒猫。
しかし今の私には、願ってもない来客に違いなかった。
さて両手に自由のない私だが、どうやって呼べば、無礼なく招き入れられるのだろうか。
それを考えるだけでも、楽しくなってくる。
少し観察してみたが、首輪もなく、どうやら野良のようだ。
ならば、私が彼(あるいは彼女)の名を知り得るすべはない。
どうしたものか。
「なぁん」
あちらから来てくれた。
成程、見つめあっていればいいのか。
ずいぶん人に慣れているのか、軽やかな足取りで私の方まで近付き、警戒することなく投げ出された両足に飛び乗った。
挨拶がわりらしく、近くなった鼻頭をひと舐め。
「…こんにちわ」
挨拶には挨拶で。
こんな身ではろくなおもてなしは出来ないけれど。
「遊んでくれますか?」
「なぅっ!」
私に応えるように、黒猫は鳴いた。