DEATHNOTE

□愛玩動物のススメ
2ページ/4ページ



紐をいじったり私にじゃれたりとひとしきり遊んだのか、今は満足したように丸くなって寝息を立てている。
私もそれに倣う。
窓から差す太陽は、夏のようにはきつくない。

(そういえば、この時間帯は日が当たって、とても暖かくなるのだったか…)

閉じようとする瞼に逆らわず、温もりに身を委ねる。
目が覚めたときも、黒猫がいるといい。
そしたら、名前をつけてやろう。

(それともすでに、名前がお前にはあるのだろうか)

出来れば、その名で呼んでやりたい。

それを最後に、私の意識はひだまりに溶けていった。





















どれほど眠ったのだろう。
日は先程とあまり変わらない位置にある。
ただ、黒猫は、いなくなっていた。

(当然か…)

けれど、おかげで今は気分がいい。
余った時間も、あの猫のことを考えていればあっというまに過ぎていくだろう。
そのあいだ、この温もりに浸っているのも悪くない。
腕が痺れてきたので、と寝返りを打つ。


ふわり


「…?」

何か柔らかいものの触覚。
まさか紐ではあるまい。
それより、何か体に違和感がある…?

「ん?」

視界の端に、優雅に揺らめく尻尾がうつる。
なめらかな黒い毛で、それは先程の黒猫と同じ。

(帰っていなかったのか?)

足のそばでちらちらと動いていたから、つい、手で強く掴んでしまった。

びりっ

「っ…、いっ…たぁぁ!?」

途端、感じたことのない痛みが全身を駆け巡る。
びりびりと、電流が流れたようだ。
しかし、何故?

もしや。


洗面所にある、鏡を覗きこむ。
まさかまさか。

「…こんな、ことが……」

ぼさぼさなくせ毛の中に、ぴくぴく動く二つの黒い山。
ジーパンからはみ出ているのは、あの尻尾。




死神がいて、
男も妊娠するような世界。

「人がいきなり半獣化しても、不思議ではないのか…?」

ここ最近常識を覆され過ぎて、何を信じたらいいのかわからなくなってくるが、

確実に今言えるのは、私に猫の耳と尻尾が生えてしまったということだった。








次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ