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□01:二人の部長
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決して軽くはない足取りで進路指導室へ向かう。
心臓がやたら煩くて、嫌な汗が背を伝った。

ふ、と立ち止まる。
いつのまにどうやって来たのか覚えていないが、そこは間違えようもなく進路指導室。
佳澄は静かに目を閉じて、深く息を吸った。
そして、ドアの取っ手にぎこちなく手をかけて――――






――――ドンッ


「った…!」
「うわっ」

横からの急な衝撃に、佳澄は耐えきれず吹っ飛んだ。
突然だったので、派手に尻餅をついてしまう。

「いた、た…」
「あ、す、すいません」

腰を擦り擦り身を起こすと、元凶らしい相手が謝罪してきた。
相手もまた予想外の出来事だったようで、衝撃に負けて佳澄の上に覆い被さるように倒れていた。
相手はハッとして、現状に気付いたらしく慌てて体を除けた。

「すいません…考え事してて…」
「いや、大した事ないんで」


気にしないで、というよりは寧ろ感謝したいくらいだ

佳澄はそう思った。
今ので、ガチガチだった体がほぐれたのだ。

(これならきっと、落ち着いて事を成せる)

佳澄は感謝と安心させるのと二つの意味を込めて相手に微笑んで、心の中で『よし!』と気合いを入れて立ち上がった。
そして、先程より滑らかな動作で取っ手を掴んだ。



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