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□02:奔走の果てに
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「何溜め息ついてるんですか、先生」
千牙が顔をあげると、精一杯腕の中に積み上げられたビニール袋の僅かな間から顔を出している佳澄が不思議そうな顔をしていた。
「いや…ちょっとな。
それより、その荷はなんだ?」
「要るものですよ、そりゃ」
「佳澄おかえり。ご苦労様」
「ただいまー…て、お前手伝えって」
結構重いんだ、という佳澄の言葉に違わず、ドンという音をたてて机におろされた袋には、大手スーパーの名前が印刷されている。
綾翠学園は私立なだけに敷地が広いが、逆にその広さゆえに土地がなく、実は結構な山の中にあるのである。
大手スーパーまでは、自転車で坂を下るうちはいいものの、登りのきつさからどんなに早くても往復40分以上はかかる。
(そんな遠くまで行って、一体何を買ってきた?)
千牙は首を傾げ、ガサゴソと袋をあさる佳澄を見ていることにした。
「佳澄、あった?」
「おー。苦労した甲斐があった。
…ほら」
袋の中身を一つ取り出して、下投げに大志に向かって放る。
綺麗な放物線を描き、難無く大志の手に収まったそれを見て、千牙は余計に訳がわからなくなった。
「…マジック?」