book REBORN!

□オレも伝えたかったのに、
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神様がいるのだとしたら、そいつはとんだサディストだと思う。

まさか、自分の手で愛する女を殺させるなんて。



紫翠は街でワイヤーやらナイフやらの武器を売っていた。
一生懸命に働く様子は健気で、笑顔が似合う、そんなところが好きだった。

それが、まさか敵対するファミリーのボス補佐だなんて、誰が思っただろうか。
今回の任務は紫翠のファミリーを潰すこと。
ボスやアジトにいた部下たちを殺し、アジトを破壊したところで紫翠が帰ってきたのだ。

『ぇ…

ボス?みんな?』

自分のおかれた状況を理解し、闘うべき相手を知ると、紫翠は清々しいほどの笑顔で言い切った。

…―――私を、殺して。


っそんなこと

できるはずが、ない。

『お願いだから!!』

紫翠はぽろぽろと涙を溢す。

「でき、ねぇ…よっ…」

『っごめん、』

次々と攻撃を仕掛けてきた。


やっぱり、闘わなければならないの、か…。


ボス補佐、と言えども所詮は女。
ボスでさえあんな呆気なく死んだんだから、力の差は歴然としている。
数分も経たずに紫翠の身体は真っ赤に染まっていた。

『ベル』

「……っ」

『後悔、なんてしないで』

抱き締めている身体が、生気を失っていて。

『自分を責め、ないで。


ベルには…っ幸せに、なって…ほしいの。』

だから、いい人見つけて、幸せになって?

そう言った紫翠はどこか寂しげで、でも幸せそうだった。

「…っ!!紫翠!?」

ごぼっと大量の血液を吐き出す。

『 』

最期の言葉を聞き、驚いて紫翠の顔を見ると、すでにその目には光が宿っていなかった。
表情は安らかで、
それが余計悲しくて、
遺体を抱き締めずっと泣きじゃくった。


そんなことを言われたら、他の女なんか愛せないのに。

言い逃げなんて、狡い。



(愛してたよ、ベル)


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