その雇用主は?(完)
□第7章・・・傍にいたい
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浩二の本気の告白から、数日がたった。
この数日間、浩二の熱烈アタックは止まることがない。
別にエッチなことをされるでも、ベタベタ触られるでもないのだが、視線がとにかく熱いのだ。
纏わりつくような熱っぽい視線を送られる。
あの美形顔で見つめられると、何だか落ち着かない気分になる。
触られてもないのに、時々、見えない腕で抱き締められているような感覚に捕われてしまうほど、浩二の視線にゾクゾクと身体が震えてしまう。
「〜〜〜ッ。浩二・・・あのさ。そんな見つめられると、何か・・・たっ、食べにくいんだけど・・・・」
学校が終えて、いつものように仕事にきた神は、一緒に夕食をとりながら、瞬き一つせずに一身に自分を見つめてくる浩二にそう言うと、爽やかな笑顔で返事が返ってくる。
「ん?食べてるお前の姿が可愛いから見てるんだ。お前が幸せそうにしてると、俺も嬉しい」
「うっっ・・・・」
キラキラとした笑顔でそんな事を言われて、神は思わず赤面してしまう。
浩二の甘いマスクは、女性はおろか、同性をもウットリさせてしまうほどの威力があるのだ。
返す言葉も見つからない神は、仕方なく食事を再開した。その間ずっと浩二に見つめられながら・・・。
「ハァ〜ッ・・・。やりにくい・・・」
食事も終え、仕事も一段落してしまった浩二がリビングのソファでテレビを見ている間、食事の後片付けを終えた神は、浴室の床をデッキブラシで磨きながら大きなため息を吐いていた。
「別にさ、俺だって浩二のこと嫌いじゃないけどさ、あんな急に好きとか言われたって、どういう風に返したらいいんだよ・・・」
床を磨く手がピタリと止まる。
「浩二は、俺にどうして欲しいんだろ・・・・?」
考えるようにボソリと呟いた。
「別に困らせたいわけじゃないんだけどな」
背後から聞こえてきた声に、心臓が飛び跳ねるかと思うほどドキッとして振り向くと、いつの間にいたのか、入り口に凭れてこちらをじっと見つめている浩二の姿があった。
「いっ!いるならいるって言えよっ!そんな目立つ顔してるくせに、何で気配ないんだよ!しかも黙って見てるなんて性格わるいぞっ?」
独り言を聞かれてしまった気恥ずかしさに、頬を赤くそめて浩二に人差し指を突きつけた。
慌てる神に、浩二はフッと余裕の笑みを浮かべる。
「顔は関係ないだろ?俺がイイ男だからって、そんな恥ずかしがらなくてもいいんだぞ?神が望むなら、俺の心も身体もいつだってお前のものになるんだからさ」
「かかからっ・・・??」
臆面もなく恥ずかしい事を言う浩二に思いっきり赤面した神は、思わず持っていたデッキブラシをカランと倒してしまった。