春と桜と恋心
□雨降って地固まる
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そして、デートの日。
待ち合わせは午前10時に街中の中央広場。
既に待ち合わせ場所に来ていた本宮を、ビルの影から覗き見て、瑞希と秋人はなにやらコソコソと会話を交わしていた。
「いいか瑞希。絶対に人通りの多い所を歩けよ?二人きりになるのは避けるんだぞ?特にインターネットカフェやカラオケボックスなんてもっての他だからな?それから、もし万がいち本宮が変なことしようとしたら、この防犯ブザー鳴らすんだぞ?分かったな?」
心配するが故に、ついクドクドと口うるさくなる秋人は、用心にと防犯ブザーまで持たせようとしていた。
「防犯ブザーって……お前ね、小学生じゃないんだから、んなのいらねえって」
「でも、もしもの事があったら…」
「大丈夫だって!日曜だから人も多いし、歌苦手だからカラオケボックスになんて行かねぇし、ネカフェとか興味ないから、そんなに心配すんな」
「約束だからな?」
「分かってるよ」
「くれぐれも気をつけてな?」
「おう!秋人も護衛役よろしく!んじゃ行って来る!」
シュタッと片手を挙げて、瑞希は広場へと向かっていった。
秋人同様、既に配置についていた生徒会メンバーが、つかず離れずの距離を保って尾行を行っていた。
後ろから見守るしかない秋人はハラハラと気が気ではなかった。
「本宮おはよう!悪い、待たせたか?」
時計を気にしながら、広場の噴水前で立っていた本宮は、少年のようにあどけない笑顔を見せた。
「おはよう川村。そんなに待ってないから、気にしなくていいよ。今日はよろしくね」
人懐こい顔に、瑞希も思わず笑顔になる。
最初に会ったときと同じように、本宮から嫌な空気は感じられない。
多分、本宮自身が自然体なのだろう。
「ああ、こっちこそよろしく。早速だけど、どうする?」
「川村の行きたい所に付き合うよ。あ、でもいっこだ俺にも付き合ってくれると嬉しいんだけど、いいかな?」
「え?ああ、いいぜ」
この、本宮のお願いが、このあと、とんでもない自体を引き起こすことを、瑞希はまだ知らない。
そんな二人の様子を、秋人たちとは別の人物が、物陰から見ていた。