その雇用主は?(完)


□第9章・・・居場所
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浩二の家に泊まることになった神は、風呂から上がると借りたパジャマを着て、ベッドルームへと足を運んだ。
ガチャリとドアを開けると、直ぐにクイーンサイズのベッドがドン!と目に飛び込んでくる。
ソレを見ると、何だか妙に意識してしまう。
恋人同士なのだから、添い寝したって別に普通なのだと自分に言い聞かせていたが、ベッドを前にすると、ついさっきここでキスされて肌を晒されたことが生々しく思い出されてし、何だかイヤらしくて不純なことをしているような気分になってしまい、ドアを開けたまま赤面してそこから中に入るのが躊躇われてしまう。
いつまでもそうしていると、突然フゥ〜ッと耳の中に生暖かい風が入ってきた。


「ひょわあぁっ!!


思わず高い悲鳴があがった。
全身が総毛だつ感覚に、驚いて、耳を押さえると、勢い良く後ろを振り返って、悪戯をした相手をキッと睨んだ。


「なな何すんだ!このっ……変態エロじじぃっ!」


思わず反応してしまった身体が恥ずかしくて、神は涙目で眉を釣り上げた。


「アレッ?感じちゃった?わりぃわりぃ。いやぁ〜、何かぶかぶかのパジャマ着たちっちゃくて可愛いモンが真っ赤になってベッド見つめてるもんだから、つい。な?」


ハハハと笑いながら、浩二は全く悪怯れる様子もない。


「うぅ〜〜ッッ!!」


反撃するも、軽くあしらわれて、神は涙目のまま悔しさに唇をへの字にひんまげて唸るしかなかった。


神をつついて弄ると、予想以上に可愛い反応が返ってくるので、浩二は神をからかうのをやめられない。
好きな子ほどいじめてみたくなると言うものだ。(小学生並みである)
神の恥ずかしがって怒る姿が浩二には堪らなく可愛いのだ。
あまりエスカレートすると、イケない事をしたくなるのも事実だが。
本気で泣かれると弱いので、浩二はいつもギリギリの所で理性を保っている。
神が本当に心も身体も曝け出してくれるまでは無理矢理手は出さないと決めているのだ。
何よりも愛しい神の気持ちを一番に考えている。

「いいからホラ、もう寝るぞ?ベッド入れ」


「ったくもう………」


何事もなかったかのように、ベッドに促されて、神はブツブツと悪態をついた。


べッドに入ると、肩まで布団をかけられた。


「ちゃんと暖かくしとかないとな。神が風邪でも引いたら大変だ」


とか何とか言っていたくせに、仕事疲れか、ベッドに入って数分で眠ってしまった浩二の方が、風邪引きそうな状態になっていた。


「ったくもう、浩二の方が風邪引くっての」


そう言いながら身体を起こし、捲れた布団を肩までかけてやると、またもそもそと布団の中に潜り、直ぐ傍にある浩二の眠る横顔をじっと見つめた。


そっと手を伸ばしてその端正に整った顔に触れた。


「ホント子供みたい。ワガママでズボラだし、スケベで変態だけど、でもカッコよくて優しくて・・。大好きだよ・・・」


独り言のように意って、神は規則正しい寝息を立てるその唇にそっと触れるだけのキスをすると、寄り添うようにして眠りについた。
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