桜物語
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「すみません、藤堂さん。わざわざ連れてきてもらったりして」
「……」
部屋を出ると、藤堂さんは壁にもたれて何やら難しい顔をしていた。
「藤堂さん?」
「…平助」
「…?」
突然自分の名前をいいだす藤堂さんに首をかしげる。
「みんな平助って呼ぶし、俺も晋哉って呼んでるんだから」
平助って呼んでくんねーか?
と真っ直ぐに言うものだから、思わず了承してしまうところだった。
「すみません。立場がありますので…」
「慣れてねーんだよ、藤堂さんっての」
「………」
「まぁ、気が向いたらでいいや!」
「すみません…」
先程とか違い、大輪の花を咲かせた笑顔になった。
「(犬みたい…)」
部屋に戻る途中に、藤堂さんは何度か話しかけてきたので頭を撫でてしまいそうな衝動にかけられたがなんとかこらえた。
「(本当に犬みたいだな)」
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