桜物語2

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「京の町に火を放つだぁ!?
長州の奴ら、頭のねじが緩んでるんじゃねぇの?」




永倉さんは鉢巻きをしている自分の頭を指して呆れた。




「それ、単に天子様を誘拐するってことだろ?
尊王を掲げてるくせに、全然敬ってねぇじゃん!」



「……何にしろ、見過ごせるものではない」




藤堂さんも斎藤さんも憮然としていた。




「近藤さん、古高が捕縛されたことで奴らも焦っているはずだ。
今夜にも会合を開いて善後策を講じるはずだろう」



「うむ、そうだろうな。
長州が会合を持つ場所は?」




近藤さんが監察方に訊ねると、島田さんがすぐ応えた。




「これまでの動きから見て、四国屋、あるいは池田屋のいずれかと思います」



「そうか……。
よし、会津藩と所司代に報せを出せ。トシ、隊士たちを集めてくれ」




局長の命で幹部は一斉に動き出した。




「よっしゃあ、腕がなるぜ!」




皆が様々な反応を見せて広間から出ていった。

久々らしく、大きな騒動というものは嬉しいらしい。




「総司、新崎、少し待て」




沖田さんも広間から出ていこうとしていたので、後を追おうとしていたところを土方さんに止められた。




「新崎君。
君の剣の筋を見込んで改めて君を新選組隊士としたいのだが、どうかね?」



「え…」




近藤さんの言葉に頭が真っ白になった。


剣の筋は稽古中を見ていたらわかったらしい…が、たがが半年ほど前に来たばかりで、もしかすると間者かもしれない奴を信用してもいいのかよ…




「僕は反対です」



「なぜだ?」



「それは…」



「もし間者だったら…という考えは理由になんねぇぞ。
お前が一番わかっているはずだろ、総司」



「………」




近藤さんの質問に対し、応えたのは土方さんだった。




「…………わかりました、これまでの変な意地は捨てましょう。
俺は皆さんの役にたてるならば…この命、誠の旗に捧げたいと思います」



「信じるぞ?
裏切った場合は容赦しねぇ」



「はい」




土方さんと視線を合わせた。

どれくらいだろうか…どちらも逸らさずにいた。




「よし、それでは新崎君には一番組に入ってもらう!二人とも異存はないな?」



「はい。」



「………」



「総司、異存はないな?」



「……わかりましたよ」




沖田さんもしぶしぶ了承した。

それを確認した近藤さんと土方さんは広間から出ていった。

部屋にいるのは俺と沖田さんだけだった。




「………」



「………」




先に沈黙を破ったのは沖田さんだった。




「…ついてきて」



「はい」










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