桜物語2

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「…入るぞ」




入ってきたのは土方さん一人。




「もう大丈夫みたいだな」



「はい。ご心配おかけしました」



「…それは雪村に言ってやれ。
あいつが一人で面倒見ていたからな」



「はい」




違う。
土方さんが一人で来たのは別に理由があるはずだ。




「……」




「……新崎晋哉、お前は何者だ?」



「何者だ、とは失礼な話ですね」



「……ふざけてんじゃねぇ。
全て話せ、場合によっては俺はテメェを殺さなけゃなんねぇ…」




そう話す土方さんの顔は【鬼の副長】そのものだった。

新選組に害のあるものには容赦しない…か。




「……そうですね。
俺の名前は…新崎蒼。性別は女です。
これまで騙していて申し訳ございませんでした。
切腹なり斬首なり何でも処罰は受けます」




手と頭を畳につける。"土下座"と言うやつだ。

やはり言えない。
言いたくない。
俺は新崎蒼だ。
風間蒼ではない。




「………」



「………」



「……頭を上げろ」



「……」




土方さんのため息混じりの言葉にゆっくりと顔を上げた。




「俺が全てを決めるわけにはいかねぇ。
決定権は近藤さんにあるからな。」




ついて来い。

そう言った土方さんは振り返らず、スタスタと先を歩いていった。




「………」





















 土方さん、変な同情はいりません。



 いっそのこと殺してください。




















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